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第四 恩人頼み
うぅ。負けないわ。私は強い子。一度や二度の失敗ぐらいで、諦めたりしない。
アイドリアンの叔母フローラ夫人に、頼んでみよう。
アイドリアンは小さい頃に母を亡くして、叔母のフローラ夫人に世話をされて育った。
私の父の城で、執務の手伝いをする部下の付き人として早くから仕事を覚えていたのも、フローラ夫人の手配。
「ラッカ、馬の用意」
「へ、がってんでい」
社交界の集まりでよく顔を合わせる人だったし、私も頼みやすい。
「まあ、アイドリアンとの縁談を取り持ってくれなんて、なんて有難い申し出なんでしょう」
瀟洒な館、アイドリアンの叔母は心良く引き受けてくれた。
優しそうな人で、アイドリアンの本当のお母さんみたい。
この人なら、結婚後も仲良くやっていけそう。
私の将来は明るいわ。
「今度、アイドリアンが来たら、それとなく話してみるわ。結婚を申し込むようにと」
「ありがとうございます」
その口ぶりから、早い時期にフローラ夫人が話してくれるのが分かったが、なんと、私はその現場を目撃した。
アイドリアンに会いに来たフローラ夫人が、ちょうど私の家、つまり王城の薔薇園で、話しているところに出くわしたのだ。
「アイドリアン、公爵様のご令嬢エルセン様にはやく結婚を申し込みなさいな」
「なぜです?」
「なぜって、あなたも嫁をもらうお年頃です。あちらも悪い思いはしてないようですから、すぐに申し込みなさい」
「嫌です。私にだって、予定がありますし」
「予定って何ですか」
「国内整備です。きちんと管理していかねば、地方主や王様から厳しいご指導をいただくかもしれませんので」
「それはまあ仕事だから大変かもしれないけど、結婚は別じゃない?あなたが嫁をもらうことに、支障があるの?」
「ええ。私は次期、宰相と言われています。その私が、姫君と縁談を組めば、反発する輩も出てきます。今は国造りの大事な時期。大きな波風は起こしたくありません」
「でも、何もそこまで考えなくても、愛があれば、ね」
「もう、この話はしないでください。お願いしますから」
「まあ、お前がそう言うなら・・・仕方ないわね」
フローラ夫人、かなり粘ってくれたけれど、アイドリアンは頑なに拒んだ。
結局、恩人でさえも歯が立たなかった。
がーん。
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