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諦める?
「お嬢様、もう無理じゃないですか?」
家臣ヨゼフィーは甘いお菓子を片手に、私の陣中見舞いに来た。
さすが、父にも覚えめでたい家臣ヨゼフィー。難攻不落の城攻めを続けて、精神が切れかけた私の気持ちを理解している。
「アイドリアンが、あなたみたいな人だったら良かったのに」
手下は、気配りも出来て優しい。ヨゼフィーの一部でもあいつの体の中に入れることが出来たら、どんなに良いか。
疲れた私は有難く、甘い見舞いを受け取る。
「え?何ですか?私にはすでに恋人がいるんですよ」
私のことは女としては見てない。こちらも安心だ。
「安心して、あなたなんか、目にないから」
「良かった」
そこまで言われると、気を悪くするが、まあ、いいだろう。
「それより、お嬢様、アイドリアン、いくら何でも無理ですって。お嬢様もいつまで、何回振られるつもりですか」
「振られてない。断られただけだから」
「まあ、堅物ですから、女に気がないですから、そうかもしれないですけど、もう無理ですよ、あんなの」
「どうして、無理なのよ。無理なものは、ないのよ、この世にはないの」
「堅物すぎて、難物すぎます」
「まあ、そうだけど、そこがまた、いいんじゃない」
ヨゼフィーは敗軍の将をいたわる目つきだ。
私もため息。
「もうじき、地方独立国に認められて、お嬢様の父は王になる予定でございやす」
「それが?」
「すでに国王から許可は出ているけれど、周辺の貴族や、土地の権利などの整理で、何かと領地内はどたばたしています。アイドリアンも忙しいから、それどころでないかと」
「忙しいからって、私のことを見ないってのは、違う問題と思うの」
領内が変遷している途中だから、忙しいというのは分かる。
結婚問題も、仕事とは別のはずだ。
「まったく、お嬢は言っても聞かないわからずやなんだな」
ヨゼフィーはため息をついた。
「こちらもなんとか言って聞かせますけど」
「頼むわよ」
全てをかけて体当たりする。アイドリアン全力捕獲作戦を、総力総動員でやるのだ。
今は、その方法しかないのだ。
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