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第六 舞踏会
すでに、私たちはもう終わり?
なんて気にしないでいいわよ。あいつは翌日、けろっとして仕事してたんだから。
まさかだけど、私の言ったこと、忘れちゃったみたい。
悔しい。怒られたほうがまし。あれだけやったのに、ころっと忘れられるなんて、プライドがずたずたよ。
私は諦めない。そう、私は諦めの悪い子。ご令嬢なのに、打たれ強いの、奇跡よ。
「お嬢様、次の週に、大きな舞踏会を仕込んでおきましたよ」
父の家臣で、私の友達を狙っている副大臣ヨゼフィーは、私のごますりに余念がない。
「でかした」
「領主である父君主催で、各地から首脳陣や、重要人物を招いています。お父上君のほかにも、権威のある人物、政治的に公権力の高い人物がたくさん来ます」
「父上、恩人から言ってもらっても駄目だったなら、その他の人物をあたるという手もあるものね」
私は丸いガラスの金魚鉢で飼っている金魚に、餌をやりながら話しかけた。
来る人物はあらかじめ知らせてもらったので、頼める相手は多そうだ。
「ラッカ、招待客で特に発言力がある者を抽出して」
「は、お任せを」
だが、面識もないので、当日会って、アイドリアンとの結婚をそそのかしてもらうのは、骨の折れる仕事であるに違いない。
一応、下僕にめぼしい人物。この場合、私に口添えしてくれる人物かどうか。を、探させた。
並大抵の口先八寸では貴族連中をそそのかせられないことを肝に銘じて、私は準備にいそしんだ。
「人を動かすには、まず綺麗に着飾ってないと」
リリーアが私の髪型を結うのを手伝ってくれた。
「リリーアこそ、準備しないで大丈夫?」
可愛いのに、リリーアはあまりお洒落に力を入れるわけでもないし、ドレスも目立つものを好まない。そこが清楚でいい。
「私はいいの。あんまり興味ないから」
「だれか、いい人いないの?」
「私はそういうの、まだ」
聞いたらヨゼフィーが卒倒しそうなことだ。
あいつも、私を見習ったほうがいいんじゃないの。まだまだ頑張り足らないわよ。
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