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*日曜日・夕刻(晴れ)
仕事がないとき、僕はよく川岸へ出かけてぼーっとする。
特に今日みたいな晴れた日の夕方は、大抵川面を背にしてここに座っている。
腰より少し高いくらいに誂えられた川沿いに続くレンガ造りの壁は、何も考えずに腰掛けているのにちょうど良かった。
視線の先には、中央に噴水を配した広場。
その向こうには石造りの家々が建ち並び、時折教会の聖堂や鐘楼といった背の高い建物が頭を覗かせていた。
背中の向こうには少々の川岸を挟んで、街の中心を流れる川がある。
水辺から進むとすぐに川の深さは増していき、ちょうど中程では大人でも頭まで水にすっかり浸かってしまう。
そのため岸辺にはほとんど人が立ち入らない。
代わりに目の前に広がる広場では、子供たちがわいわいとじゃれ合いながら駆けまわり、向こうの方にあるベンチではそれを見守る大人や老人が楽しそうに笑い声を上げながら話をしている。
そういった人の姿に重なって胸のあたりにぼんやり灯る色とりどりの焔。
――ああ、きれいだ。
何度見てもそう思う。
人、動物、植物。生きとし生けるモノの『魂』の焔。
生まれたときから『死神』として生きてきた僕の目にはそれが鮮やかに映っていた。
僕がよくこの場所に座っているのは、きっとここに来る人たちの焔の色が街の中でも一段と優しく暖かく、そして美しいからだと思う。
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