香りが舞う

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香りが舞う

大きな風が僕たちに吹く 縦に降りていた雪も 僕たちに打ち付けるように 横に吹いた 彼女は髪の毛を抑えながら 少しよろける 僕の肩に 彼女の肩が触れた 「ごめんね ビックリしたね~今の風」 彼女は無邪気に笑う 僕は小さく頷く 「桐山くんさ いつもここに来るの?」 彼女は僕の名前を知っている 知っていたことに驚く 僕は頷く 「ここっていいね 三年間 この学校のいろんな所をふらふら歩きまわっていたけど ココには今日 はじめて来た」 彼女は周りを見渡す 学校内でも外れにある剣道場は 部活の時間に関わりのある生徒しか来ない だから それ以外の時間は全く誰も人が来ない場所 一人を探し 学校内を放浪していた僕は それを知っていた 休み時間 特に 二時間目と三時間目の間にある 20分休みと 昼休みには 僕は一人でココに来ていた ここに居ると 一人きりになれて 心地が良かったからだ 教室にいたって 一人だけども まわりの目がないだけ 自由度が高いんだ 彼女はこちらを覗き込むように見て 「桐山くんって どうして誰とも話さないの?」 彼女は もう一度吹いた 後ろからの強い風に また 髪の毛を抑えて目をつむった 長い彼女の髪が僕の方になびくと 優しい香りがした
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