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リリアンヌ・マルティン男爵令嬢――これが今のあたしの名前。
と同時にあたしの前世で流行った乙女ゲーム『蒼穹に輝く君へ』のヒロインだったりする。
成り代わりですね(白目)。
先日、学園の廊下でコケてめでたく前世の記憶を取り戻しました。
(え? アルフォート第一王子っ!? 騎士団長グレイ・サンガル公爵の嫡男のカイル様っ!? って、何で皆、あたしを甘やかしてんのよっ!?)
そこからドミノ式に記憶がどんどん蘇ってきて、頭抱えたけどね。
(だって、この娘全然周りが見えてないしっ!!)
もともと『男爵』というのも貴族の中では下級貴族のほうで、更にこのリリアンヌ嬢、妾腹の出なのだ。
あれです、ほら。
そこの主が侍女にお手つきして、ってパターンです。
で、お決まりのように子を宿したらポイ、って。
その後、跡継ぎが早逝したからって探し出したころにはリリアンヌ嬢の母親は亡くなっていて、って来るの遅っ!!
(何がずっと気になっていたよっ!! だったら、最初から追い出すな、っての!!)
その辺り、記憶が戻ったあたしからしたら、噴飯ものなんだけれど、この『お嬢さん』は違ったらしく、普通に(!)『お気に掛けて下さって有り難うございます』って違うがなっ!!
そこは怒るとこっ!!
何でここまで(片親だけでもキツいのに、母親まで亡くなっちゃって路上生活まで秒読みだったんだよっ!!)放っておいたんだ、って泣き真似でもして、慰謝料ぶんどったら、さよなら、っては無理か。この世界、男性上位だものなー。
遠い目になっていると扉の向こうが騒がしくなった。
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