第3話 夜のデートへ

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「だって、若い子の遊びよく知らないし」 (夜遊びする体力もないし) しかし彼が寂しそうに、 「……じゃあいい。帰ろうぜ」 と呟くと、比菜子の胸はギュウと締め付けられた。 (そんな顔されたら、帰りたくなくなる……私もまだ一緒にいたい) そのとき、彼女はいいことを思い付き、パッと笑顔に変わる。 「そうだ! ツカサくん。一か所だけ行きたいところがあるの。ていうか、ツカサくんに紹介したい場所! 今から行かない?」 「ど、どこだよ?」 「秘密。着いてからのお楽しみ」 善は急げとばかりに食べ終わったパスタの器を返却し、「なんだそれ」と怪訝な顔をするツカサの手を引き、すぐさまレジへ。 出てきた店長の戸崎に「ご馳走さまでした」と挨拶をし、伝票とぴったりの現金を置く。 彼は「またいつでもいらして下さい」とほほ笑み、去っていくふたりを見送った。 * * * 「比菜子の行きたいところって、ここなのか……?」 のれんの下から灯りの漏れる、古い木造の屋敷を前に、ふたりは並んで立った。 夜の街をくぐり抜けてたどり着いたのは、大通りから少し中道に入ったところにある風呂屋である。 紺ののれんには白い字で『ハイパー銭湯』と力強く書かれている。 (なんだハイパーって……) 「ここすっごくオススメなの! バスタオルを借りてもワンコインで入浴できて、最近改装されたから綺麗だし」 「温泉ってことか……?」 「違う違う。銭湯。ただのお風呂よ。今のアパートはシャワーしかないでしょ? 心身の健康のためにも、たまに湯船にゆっくり浸からなきゃね」 「ふ、風呂……? 俺誘って、風呂? お、お前……」 明らかに引き気味に感じた比菜子は、「しまった」と思い彼の顔を覗き込む。 「ご、ごめん。年寄りくさかったかな」 「いや、そうじゃなくて……カラオケとかより、こっちのがハードル高けぇだろ……」 「嫌だった?」 「嫌じゃねーよ! 行く!」 宣言通り、ツカサにふたり分の利用券を買わせ、中へ入った。 玄関の先はほんの少しのベンチコーナーの先はすぐに男湯と女湯に別れているため、一緒には来たが早々に個人行動になる。 「じゃあ、四十分後にまたここで」 「おう」 手を振り合ってから、ふたりは同時に、別々ののれんをくぐった。
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