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ツカサはベッドの横に立ったまま、比菜子のそばへ手をついて体重をかけた。
始まりの合図のごとく、〝ギッ〟とベッドが鳴る。
彼女のスカートに浮き上がる桃のような尻を目の当たりにし、すでに戸惑いの汗をかき始める。
(や、やばい、やっぱり比菜子って、なんか……)
〝グラマー〟という単語が語彙になかった彼は、〝エロい〟という感想が頭に浮かぶ。
(落ち着け、ただマッサージするだけだろ。……マッサージってどうやるんだ……?)
意思に反して震えの止まらない手のひらを、とりあえず彼女の背中へとあててみた。
(うわ、細っ……)
肩甲骨が触れたため、そこを親指の付根で軽く押し、グリグリと動かしてみる。
「あ。ツカサくん上手。気持ちいい」
「ほ、本当か!?」
「うん」
誉められたのがうれしいツカサは、もう一度「気持ちいい」と言わせるべく、同じところをさらに刺激する。
「あー……いい。すごーい……」
うっとりとした比菜子の甘い声に、ツカサはさらにご満悦になる。
そこで今度は腰を揉むべく、ベッドに乗り、比菜子の太もも付近に股がった。
(うそ!? ツカサくん、ベッド乗ってきた?)
比菜子は硬直し、さすがに上半身を起こそうとしたところだったが、
「あっ……! やだそこ、気持ちいいっ……」
スカートのホックの上辺りを指で押され、快感に逆らえず、うつ伏せのまま腰砕けになる。
「ここか?」
ツカサは誉められる喜びで興奮しているのか、それともなにか別の理由で熱くなっているのか自分ではわからないまま、どんどん息が荒くなっていく。
「ツカサくんっ、待って……」
「ここだろ? ここがいいんだろ?」
「そうだけど……! んっ、もっと優しくしてっ……」
彼の腕の下で身じろぎした比菜子は、体をねじって上半身だけを持ち上げる。
腕をついて支えながら背後のツカサへと目を向けると、紅潮して熱くなったお互いの顔が至近距離でバッチリとかち合った。
(うわっ……)
(やだっ……)
両者、ハッとする。
この体勢に、台詞、表情、なにかがおかしい。ただのマッサージがこんなことになるのだろうか。
「ツ、ツカサくん! あああありがとう! もう大丈夫だから!」
「お、お、おう! そそそそうか!」
ツカサはすぐさま猫のように身軽な動きでベッドから退き、彼のせいでスカートが捲れて太ももが丸見えの比菜子が取り残された。
ツカサはがんばってそこから視線を外し、彼女が起き上がるのを待つ。
ドクン、ドクン、とふたりの鼓動だけが響き渡る。
比菜子は両手で頬を覆い、ギュッと目を閉じて呼吸を整えた。
(ダメだってわかってるのに。こんなの続いたら、身がもたないよ……)
胸の鼓動に気づかないふりをしても、それは一向に鳴り止む気配はなかった。
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