第6話 キスと溺愛宣言

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『……え……?』 「そんなこと言って結局私の力を借りたいだけじゃない。私のこと利用するだけ利用して、用がなくなったら出ていくつもりのくせに。いいわよね、素直で無邪気で。なにを言っても許されて」 電話の向こうから声がしなくなった。 しかし比菜子はさらに畳み掛ける。 「だいたい、もう冬なのにまだ就職活動を始めてないなんて就職するつもりないんでしょ。ツカサくんだってお父さんの会社をあてにしてるんじゃない?」 『……比菜子』 (どうしよう、止まらないっ……) 絶望に震えるツカサの声が聞こえ、彼が今どんな顔をしているか予想がついた。 しかし、比菜子は込み上げる黒い感情を抑えられず── 「結局ツカサくんって、ひとりじゃなにもできないじゃん!」 (あっ……) ベッドの上に、光ったままのスマホを落とした。 自分の言葉が信じられず、両手で口を押さえてプルプルと震える。 ツカサがなんと答えるのかこれ以上聞く勇気はなく、手を伸ばして通話を切った。 (……バカだ……) 膝を折って座り、そこに顔を埋める。 嗚咽が止まらないほどの情けない泣き声をそこで押し殺した。 『ひとりじゃなにもできないじゃん!』 (私だけは、そう言っちゃいけなかったのに) 必死になんでもやろうとしてきたツカサの姿が次々に甦る。 (ツカサくんがなにもできないなんて、本当は思ってないのに──) 眠りに落ちるまで、涙が止まることはなかった。
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