第7話 YESの決め手

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「ショックだった」と言われてもしかたのない、ひどい言葉だったと比菜子は思い返してうつむく。そのときのことを蒸し返せば彼が「やっぱり好きじゃないかも」と告白を撤回するのではないかと怖くなった。 不満を言われても受け入れようと縮こまって身構えていたが、目の前のツカサは、 「そんなの、気にしてねぇよ」 と答え、フッと笑みを落とす。 「……え。本当に?」 「切羽詰まってると、思ってもないこと口走るもんだろ。俺も比菜子にいろいろ言ったからわかる」 「え? なんのこと?」 今度は比菜子が首をかしげた。 「オバサンって言った」 (……そうだった) 寛大に許したツカサとは違い、比菜子の方にはそのときのムカムカした感情が甦ってきた。しかしここで怒りを蒸し返すのは大人げないと思い、自制する。 「……私も、全然気にしてない、よ」 「あのときは八つ当たりしただけだ。ごめん。比菜子のことオバサンだなんて思ってない。本当は初めて見たときから、かわいいと思ってた」 (なっ……!?) 「嘘つくんじゃありません!」 「本当だっつーの!」 喧嘩腰で誉められ、比菜子の着替えたばかりのビジネスカジュアルは汗ばみ、頬はたちまち熱くなる。 「……で、でもさ、ツカサくんはモテるでしょ。かわいい子なんていくらでも……」 「は? 俺全然モテねぇよ」 「それは嘘!」 「マジだって。……よくわかんないけど、いい感じだと思ってた相手にもすぐフラれる。まともに付き合ったことない」 (絶対うそ、絶対うそ、絶対うそ) 「本当だぞ」 ツカサは比菜子をジッと見つめたまま決して視線を逸らさない。 「……う、うう~……はい! この話はいったんおしまい! 遅れちゃうからもうご飯食べて! 続きは夕飯のとき話そう!」 「……わかった。今日外で食べようぜ」 「えっ……」 (デートってこと……?) 一瞬沈黙が走る。 たしかなトキメキを感じている今、これ以上拒否をする理由はなかった。 「……う、うん。わかった」 風呂上がりのように温まった顔を、パタパタと手で仰ぐ。 とりあえず話に一区切りついたと思い、その手をテーブルの上のおむすびへ伸ばした。 すると、対面からも手が伸びてきて、油断していた無防備な比菜子の手が(から)め捕られる。 「えっ……」
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