254人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
彼の手に引っ張られてお尻が浮き、テーブルに前のめりになる。ガタン、と音が立ったかと思うと、テーブルの向こうのツカサも身を乗りだしており、彼はさらにグッと首の後ろを引き寄せて唇を繋げてきた。
「んっ……!?」
ツカサのふわふわの前髪が、額に触れる。
キスをするタイミングではなかったように思う。それどころか、そういうのはまとめて今夜考えようと約束をしたばかりだ。
そう思っても、このキスに抗うことなどできなかった。
(あ……だ、め……)
とろけるような感触と甘い匂いに夢心地で、目蓋ががトロンと落ちていく。
味わうようなゆったりとしたキスを続けていると、ふたつの唇は〝ぴちゃ〟と音を立て、それだけでビクンと体が反応した。
膝立ちになっていたため、力の抜けたお尻が正座した足裏の上に落ちていき、やがて体を支えていられなくなった。
それでもしばらく唇は名残惜しく繋がっていたものの、ヘナヘナと溶けていく比菜子をツカサはやっと解放した。
まるで一線越えた後なのではというほど、ふたりは熱っぽい吐息を漏らす。
「……俺たち絶対両想いだから。今日はっきりさせてやる」
ツカサは捕食者の瞳を彼女へ向けながら、今度こそおむすびへ手を伸ばした。
(……もうはっきりしてるってば……)
生まれたての小鹿のようになってしまった比菜子はまったく味のしないおむすびをかじり、放心しながらモチャモチャと喉の奥へ流し込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!