第8話 ツカサの正体

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第8話 ツカサの正体

「おはよ、比菜子」 「お、おはよう……」 一夜明け、土曜日の朝。 いつものようにノックの後、ドアを開けて顔を合わせた。 昨日と違うのは、休日のため比菜子はすっぴんで髪にアイロンをあてていないことと、ふたりの間にどこか甘い空気が流れていることである。 「ツカサくん。今日はバイト、朝からランチの終わりまでだよね? 待ってて、昨日サンドイッチの具作っておいたから今出すね」 「サンキュ」 ロールパンに縦に切り込みを入れ、マヨネーズで和えたゆでタマゴ、スライスしてあるトマトときゅうりにチーズ、そして甘く炒めた玉ねぎとウインナーをレタスとともにそれぞれパンに挟む。 三つずつお皿に乗せ、小さなキッチンで「完成!」と彼女が独り言をつぶやいたとき、ツカサは比菜子の後ろ姿に手を伸ばした。 「えっ」 後ろから彼女をすっぽり抱きしめたツカサは、サンドイッチを眺めて「美味そう」とささやく。 (わーわーわー……!) 手際よかったはずがカチンコチンになって動けなくなり、ツカサの熱が背中に伝わってじわりと湿る。 「ツ、ツカサくんっ……どしたの……?」 「いいんだろ、こういうことしても。もう俺の彼女なんだから」 (……彼女……!) 感動でじんと目もとが潤む。そこらへんをきちんと言葉にせずにいたから、この関係にまだ名前が付けられないと思っていた。 「違うのか? 彼女にはこういうことしてもいいんだろ?」 「う、うん……もちろん。いいよ」 「やった。ずっとしたかったんだ。料理中の比菜子すげーかわいいから」 (……え、なに。……これ天国?)
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