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「す、すごい……。え? ここ私たちだけで使っていいんですか? 無料で?」
「もちろんです」
(ただの社員なのにうちの会社太っ腹すぎ……)
中はトレーニングマシンが全種類順々に置かれ、ホットスタジオやシャワールームが完備されたプライベートルーム。
フロアの一画であるが、比菜子はその十分すぎる広さと設備に圧倒された。
「専属のトレーナーはお付けいたしましょうか?」
「え!? い、いえ、いいです。ちょっと体動かそうと思っただけなので。使い方もラベルが貼ってあるみたいですし」
「かしこまりました」
一礼したスタッフの男性は、スライドドアの前でもさらに一礼してから外へと出た。
扉が完全に閉まり、足音が聞こえなくなるのを待ってから、比菜子は興奮気味にツカサへぐるんと顔を向ける。
「ねえねえ! すごくない!? これVIPルームってやつだよね?」
ツカサはトレーニングマシンに貼られた説明のラベルをひとつひとつ興味深く見て回りながら、「そうだな」と返事をした。
「ツカサくん興奮しないの? あ! そうか、御曹司だからこういうところ慣れてるんだ」
「御曹司って言うなっ」
「ごめんごめん。でも、自分のところのサービスは自由に使えるんでしょ? ねね、ツカサくんちはどんなことをやってる会社なの?」
ワクワクしながら彼の回りをウロチョロする比菜子の質問を、ツカサは「知らねえよっ」と一掃する。
「親父の会社には関わらないって決めてるんだ。どんなことしてんのかなんて興味ねぇし、知ってても絶対使わねぇ」
「えーもったいない」
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