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この話は終わりだ、とばかりにツカサは踵を返し、入り口に並べられている黒のウェアとバッシュを手前から手に取る。
比菜子もそれに従い、ピンクの女性用ウェアを選んだ。
「着替えてくるね」
ウェアを抱え、左手にある小さな更衣室を指差すと、ツカサは「おう」とうなずき、着ているパーカーの裾をまくり上げながら「俺はここでいい」と着替えを始める。
(きゃー!)
「わ、わかった! 行ってくるね!」
チラリと見えた彼の腹筋に思わず胸が鳴り、急いで更衣室へ引っ込んでドアを閉めた。
数分後、ツカサが着替えを終えて待っていると、更衣室の中から「あ、あの、ツカサくん……」とか細い声がする。
「比菜子? どうしたんだ?」
「ごめんね。あの……別のウェアを取ってきてもらってもいいかな? 私、ちょっとこれ似合わなくて……」
「はあ? スポーツウェアに似合うも似合わねぇもあるかよ」
首をかしげ、隔たれたドアのそばまで事情を聞きに近寄った。
少し様子がおかしいと感じて「大丈夫か?」とノックをしてみると、
「似合わないっていうか、その……ちょっと露出が多くて。Tシャツかと思ったら、タンクトップだったから……」
と、乙女のように恥じらった返事が返ってきたため、思わずゴクリと喉が鳴る。
「い、いいじゃん。それで。俺とふたりだけなんだし」
平静を装うツカサだが、内心もう興奮が抑えきれずワックワクである。
以前、マッサージをしたときに見た比菜子の体は、健康な二十二歳男子の欲求をくすぐるには充分だったと記憶している。
「ツカサくんだから恥ずかしいんだよ! なんか体にピッタリしてるし、下もすっごい短くて水着みたいで…… 」
「それでいい。見たい」
「……なんかエッチなこと考えてない?」
「考えてねえよ! 見たいだけだ! はやく出てこいって!」
(考えてるじゃん!)
間違いなくスケベ心なのに自覚のないツカサは鼻息荒くキャンキャン吠える。
更衣室内の比菜子はもう一度姿見で確認し〝やばすぎない?〟と心の中でつぶやくが、恥ずかしさの中にも彼がこれを見たいと言っている事実にトクンと胸が疼いた。
「……わ、わかった。じゃあ、出るね。幻滅しても知らないよ」
ノブが下がり、キイと音を立てて扉が開く。
ツカサがゴクリと唾を呑んで見つめる中、比菜子は最初は扉に隠れながら、そして徐々にそれを開いて姿を晒した。
「……ね? 言ったでしょ」
耳まで真っ赤になりながら、比菜子は彼から目を逸らして口を尖らせた。
カップ付きのタンクトップウェアは胸の形がはっきりと浮かび上がり、柔らかな質感まで視覚に現れる。
ウエストにもピッタリとフィットしており、彼女は露出した白い二の腕を恥ずかしそうに隠していた。
(やばい……)
彼女が言っていた通り、太ももが丸出しの長さのパンツは張りのある肌にもっちりと食い込んでいる。
(超エロい……。勃ちそう)
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