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悶々とするツカサの視線を手のひらで阻み恥じらいを見せる比菜子だが、彼女もツカサの体をガンガン見ていた。
黒の半袖のウェアは体の表面にピッタリとくっつくデザインで、胸筋も腹筋も、鎖骨の形も浮かび上がっている。
パンツは紐で結ぶタイプの余裕のある九分丈だが、いつもは見えないくるぶしがちらりと見えており、それだけでやましい気持ちになった。
(ツカサくん、意外と筋肉すごいんですけど! え、やばい……)
たしかに細身ではあるのだが、中性的な顔立ちと比べるとややアンバランスに感じるくらいほどよい筋肉がついてる。
「ツ、ツカサくんって、鍛えてる?」
彼女は自分の格好の恥ずかしさはすっかり忘れ、興味津々で顔を近づけた。
「鍛えてるっていうか、『へるすた』がアドバイスしてくんだよ。腹筋をやった方がいいとか、走って帰れとか」
「そっか! へるすたかぁ! すごーい……いい体……」
(それはお前だ!)
欲を隠さず、うっとりとツカサの腹筋を見つめる比菜子は、彼に目を開いて太ももを凝視されていることは気づいていない。
「……やるか。トレーニング」
「そうだね!」
((このままじゃ妙な気分になりそうだし……))
壁に貼られたトレーニングメニューのパネルをふたりで確認し、比菜子は『しなやかな身体を造るレディースメニュー』、ツカサは『筋力増強メニュー』を選んだ。
どちらも十五分間のウォーキングから始まるため、二台並んで置いてあるランニングマシンにそれぞれ立ち、スイッチを入れた。
「いいな、これ。速さとか傾斜とか調整できるし、テレビも見れるのか」
「ね。いい設備」
ウォーキングとは言っても、規定値の速度はほぼ早歩きか軽いジョギングのようなもので、比菜子はさっそく息が上がり始める。
「あーん、いつもゆっくり歩いてるから、この速さキツいかもー」
「がんばれ」
隣でへばる比菜子を見てクスクス笑うツカサだが、彼女の姿にギクッとする。
(……比菜子、胸デカい)
比菜子も細身ではあるのだが、胸だけはゆさゆさと揺れていた。
いつもはしっかりとワイヤーの入ったブラジャーで固定しているからか、無防備な今は肉感が数割増しになっている。
(……ちくしょう、触りたい。いやダメだ、触るな俺)
油断するとすぐに彼女のお色気光線に当てられてしまうため、ツカサは悩ましげに眉根を寄せながら深呼吸を繰り返す。
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