第8話 ツカサの正体

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ツカサも別の意味で息が上がり始めていたが、十五分が経ち、比菜子の胸の誘惑になんとか耐え抜いた。 ランニングマシンが終わると体が軽くなった気がし、ツカサはその調子で、グリップが高い位置にふたつ付いた懸垂マシンへと移動する。 身体が軽いためひょいひょいと懸垂を始めると、そこからランニングマシンを終えた比菜子がグリーンのヨガマットへ移動する光景がよく見えた。 比菜子はマットのある壁に貼られたポージングのパネルを見ながら、まずは指示通り四つん這いになる。 すると、ツカサの懸垂が上がった状態で止まる。 (胸が……) ツカサからは、重力で落ちた彼女のふたつの胸の谷間がくっきりと見えていた。 彼女はその状態で足を曲げて抱え込んだり、後ろへ伸ばして上げたりするため、それによって胸はふにふにと柔らかく動く。 (……あー……俺、もう……) ヨダレが垂れそうほど間の抜けた顔で彼女の胸を凝視したツカサは、グリップを離してストンと降りる。 身体が向かうまま、比菜子のいるマットブースへと歩みを進めた。 「ツカサくん? どうしたの?」 マットの上ではバッシュを脱ぐはずがツカサがそのまま上がってきたため、比菜子は首をかしげながら起き上がる。 ツカサはマットに膝と手をつき、お尻をついて座っている彼女ににじり寄った。 「えっ? えっ? ツカサくん? なに?」 後退りをしたが、やがて比菜子の背は壁につく。 迫り来るツカサの顔は紅潮し、かすかに肩を上下させながら、なにかを押し込めるように熱い息をしていた。 「悪い、もうダメだ比菜子、ちょっとだけ……ちょっとだけでいいから……」 「え? なになになに?」 「ちょっとだけ、触らせてくれ……」 彼の視線は、目の前の比菜子の谷間に釘付けになっている。やっとそれに気づいた比菜子は頬を真っ赤に染めながら、「ええ!?」という声を上げて胸を隠した。 「触らせてって、胸を!? 私の!?」 「……うん。……ダメか?」 眉を歪めて懇願するツカサの余裕のない表情に、比菜子は胸の奥をズキュンと撃ち抜かれた。 「……そ、そんなにいいものじゃないよ?」 うれしさと恥ずかしさで胸がいっぱいになりながらつい謙遜してみるが、比菜子こそ、期待でドキドキが止まらなかった。
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