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ツカサは着いていた膝を緩めて下半身ごと彼女に押し付け、目の前の双丘をめがけて上半身も倒していく。
(わ、わ、ツカサくん、どこまでする気……?)
彼が欲望のままに迫っていると理解した比菜子は、自身も好奇心を抑えきれない中、これ以上進んでからのストップは逆に気の毒だと正気に戻る。
「ツカサくん、ツカサくん……」
「……ん?」
待ったをかけてほしくないと露骨に顔に表れている彼に、比菜子は流されまいと胸を揉む手を掴んだ。
「もうダメだよ。……ここジムだもん」
今にも谷間に顔を埋めそうになっていたが、悶々と考えるような、訴えかけるような目で彼女を見つめ返す。
「……ジムだから?」
「うん」
「……最後までダメ?」
「ダメだよ!」
結果はわかりきっていたツカサだが、拒否されて口を縛り、とがらせる。
あきらめる時間を数秒とった後、彼は煮え切らない顔のまま上体を起こした。
「……じゃあ、帰ったらしていい?」
疑問形でしか話せなくなった姿はまるで小さな子どものようだが、荒い息も視線も、今にも食らいついてきそうな雄である。
今日中にすると宣言をされた比菜子は身体中から熱が沸き上がった。
「……うん。帰ったらね」
決断する前に返事をした。そうすれば引き返せない。
(帰ったら、するんだ。ツカサくんと)
「約束」と熱いアイコンタクトを交わしたふたりは、どちらからともなく体を離した。
比菜子はマットはやめて腹筋マシンへ、ツカサは懸垂に戻る。
上げ下げしながら煩悩にまみれて彼女の腹筋姿を眺め、帰ってからのことに思いを馳せていた。
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