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思いきり頬を膨らませた比菜子は、画面をスクロールしながらコメントたちを睨み付けた。
ツカサは最初は首をかしげていたものの、徐々にハッとし、そして顔を赤くする。
「……比菜子。妬いてんのか?」
「はっ、妬くっていうかっ……」
比菜子は図星すぎて言葉に詰まったが、意地を張ってもしかたないとあきらめて「だって嫌じゃん!」と開き直る。
ハートマークのコメントだらけのスマホ画面で、彼の胸板をポンポンと叩いた。
まったく痛くない攻撃をくすぐったく感じながら、ツカサは手のひらで口もとを押さえ、緩んだ顔を隠す。
「ツカサくん!? なに笑ってるのよっ」
「いや、その……比菜子も妬くんだなって。俺ばっかりかと思ってたから、その……」
彼の顔はどんどん赤みを増し、やがてそれは耳まで到達した。
「……私だって有沙ちゃんにめちゃくちゃ妬いてたよ?」
「……マジで?」
ふたりの熱をはらんだ視線がかち合う。
(……あ……)
彼の綻びながらも期待のこもった瞳は、ギラギラと彼女を射ぬいている。
感じ取った比菜子も胸の奥でギュンと音が鳴る。
(今から、〝する〟……?)
視線で確認を取り合い、力の抜けた体は、座ったまま吸い寄せられるように重なりあう。
ギュ、と隙間のないよう抱き合うと、お互いの心臓の音が内側で響いた。
「……比菜子」
呼ばれて顔を上げ、目を閉じてゆっくりとキスを交わす。
ドキドキが最高潮になりながら、音の鳴るキスに没頭した。
「ん……」
キスをしたまま今にもカーペットに押し倒される、というところで、比菜子の薄く開いた瞳はツカサの座布団のそばに放られたスマホ画面を捉える。
すると、最新欄に思いもよらぬコメントが書き込まれているのを目にした。
【通りすがりのM◆ジム楽しめた? 意外と盛り上がるよね!^^】
(……え?)
ゾクッと悪寒が走り、比菜子は完全にそちらへ顔を向ける。からめていた舌も唇もツカサから離れた。
「比菜子?」
高ぶったまま彼女の唇を追いかけようとしたツカサだが、こちらに意識のない彼女を怪訝に思い、視線追って同じスマホへと目をやった。
「どうした?」
「……ねえ、なに? この〝通りすがりのM〟って人」
「だから知らねぇって。向こうから勝手にくるんだから。なんだよ、まだ妬いてんのか?」
「そうじゃなくて! 日記にはふたりでジムに行ったなんてひと言も書いてないのに、〝盛り上がる〟って……まるでどこかで見てたみたいな言い方じゃない……?」
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