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「ツカサくんっ……わ」
彼に一瞬で距離を詰められ、伸びてきた腕にベッドの上へと持ち上げられる。
「比菜子がこんなに喜ぶなら、はやく黒に戻せばよかった」
彼女の頭がきちんと枕に乗るように体を倒しながら、続いてツカサもその上にのし掛かる。
比菜子の長い髪を愛おしそうにクルクルと遊ぶ彼の指に、彼女は目を閉じて頬を寄せた。
「髪色だけじゃないよ……。ツカサくん全部格好よくなったよ」
「……そっか」
複雑そうな顔でへらっと笑ったツカサが気になり、比菜子は「ツカサくん?」と名前を呼ぶ。
彼は一度体を起こし、真剣な目をした。
「比菜子。俺は自分がガキだってわかってるから」
「え……?」
「全部、自覚してるから。このさき比菜子とどうなっていきたいかちゃんと考えてるし、それには今のままの中途半端な自分じゃダメだって」
彼の表現は曖昧だが、比菜子の宙に浮いていた疑問にダイレクトにぶつかった。
力が抜け、「そんなことないよ」という言葉が出せないほど胸がいっぱいになり、瞳が潤みだす。
彼はそんな比菜子にフッと笑みを落とした。
「だから俺のことガキみたいに誉めんなよ。どうしてほしいのかわかってるから。ここであきらめんなって」
「……ツカサくん……」
「ほらやっぱり。図星だろ。大人ぶんなよ」
涙が頬を伝う。
ツカサはそれを親指で拭い、代わりに唇にキスを落とした。
(見透かされてた……)
彼の決意が伝わるキスを受けながら、比菜子は自分の中に秘めていた気持ちが溢れだすのがわかった。
「……私、ツカサくんと、ずっと一緒にいたいっ……」
「うん。わかってる。俺もだよ。だから髪染めてきたんだから」
抱き合いながらキスをし、見つめ合い、ふたりは何度も愛を確かめた。
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