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───ツカサは比菜子からの【もうすぐ帰るね】というメッセージを見ると、いてもたってもいられなくなった。
比菜子を信じている。しかし、彼女の顔を見て真実を聞いて、安心したい。
勤め先の御曹司だと知って「すごい偶然だね!」と驚く彼女を見れば、この不安はすぐに収まるはずなのだ。
ツカサは一度外したへるすウォッチを、また手首に着けている。
(比菜子……比菜子……!)
通りを駆け抜けながら、彼女との今後に思いを馳せていた。
(比菜子が選んだ会社なら、親父の会社をもう少し知ってみてもいい。今まで意地になって避けてきたけど、比菜子を幸せにするために必要なら、俺は──)
チェリッシュを通りすぎ、駅前の大通りへたどり着いた。
そこには──……
「──え?」
ツカサは呆然と立ち尽くす。
それは見覚えのあるファミレスの前。
ガラス張りの壁面のそばのソファ席に座る、比菜子を見つけた。
「……親父……?」
オーバーな身振り手振りで話す父親と、ヘラッとした笑みを浮かべながらそれを聞いている比菜子。
そして彼らの間には、分厚い現金封筒が置かれていた。
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