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第1話 ツカサくん襲来
すべての始まりのチャイムが鳴った。
「はいはーい」
ドアノブをひねり、押し開ける。
(扉を開けたら、そこは──美男子でした)
比菜子は、ドアの外に立っているチャイムを鳴らした張本人を見て、頭の中で思わずそうつぶやいて固まった。
このオンボロアパートに似つかわしくない、驚くほどの美男子が立っていたのだ。
ドアの前の彼は高すぎない百七十センチほどの背丈で、頭は遊ばせる程度の金髪、上下ゆるいスポーツウェアを履いている。
それはどれも綺麗に整っており、彼の吸い込まれそうなつり目は、ジッと比菜子を見つめている。
金髪にジャージ姿だなんて、普通、第一印象は〝ヤンキー〟だろう。しかし比菜子の彼への感想は、
(……猫?)
だった。それも毛並みのよい、ペルシャ猫。
比菜子も、緩いTシャツに脚を出したショーパン姿の、いつもの部屋着である。長い黒髪は後頭部でお団子に結んでいる。
しかし、同じようなゆるい格好なのにキラキラ輝く彼を前にして、彼女はまるで陰になった気分だった。
一目だけでは、彼の年齢は不祥である。美少年にも、美青年にも見える。
いったい何者なのか。
それは後々、わかることである。
これが、激安アパートで暮らす限界OLと、正体不明の年下猫系男子のファーストコンタクトである。
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