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優しい兄セルケト
「っ!」
「ほらほら、悲鳴を上げたらどうなの?楽しくないでしょう?」
また1つ、私の背中にナイフで傷がつけられる。
「お兄様ったらもっと喜んでよ、つまらないでしょう?」
ザクリ、ザクリと致命傷にならないサイズのナイフが背中に突きつけられる。
今日はもう何回目だろう…覚えてない。
「そろそろ夕食の時間になるからもうやめようか」
「そーだね。じゃあ下ろそうか」
鎖が外され、私は地面にべちゃりと落ちる。自分が垂れ流した尿に顔を擦り付けるように…。
もう慣れた。風呂に入ればいいことだ。痛みも…慣れた。
「……」
弟達とその母親がいなくなったのを確認して私は自室に戻る。
「セティ」
するといつものように兄が待っていてくれた。
「兄上…」
「こっちへおいで…」
兄が横になる私のベッドに近付くと兄は起き上がり汚れた私を自分が汚れるのも構わず抱き締めてくれる。
「辛かったね、痛かったね…助けてあげられなくてごめん」
「いいえ…兄上にはご迷惑はかけられません」
ヒュウ、ヒュウと兄の人工呼吸器から流れる酸素の音が間近で聞こえる。
日に日に兄は痩せて来た…。病気なのだ……今の医療技術をもってしても治せない…
「シャワー、入ろうか。傷口流さなきゃね」
さぁ、と背中を押され、シャワーを一緒に浴びる。
先に私が洗われ、それから私が兄の体を洗う。
骨と皮に近い兄…。時々咳をして苦しそうになるのが心配だ。
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