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兄とお風呂
「僕が回復魔法を使えればいいのにね」
「駄目です。兄上はただでさえ魔力を温存しないと…」
「ごほっ、ごほっ、でも、セティの役に立ちたいよ…」
「充分役に立っています。兄上がいて下さらなかったら私はとっくに自害しています」
世辞ではない。本当に私は兄がいなかったら…死にたいと思っただろう。
私には使命がある。兄を王にしなければいけないという使命が。
「そんな事は言う物ではないよセティ。僕が長生きできないのは知ってるだろう?」
「…はい」
「せめてセティのお嫁さんを見てから死にたいな…あぁ、出来れば子供も見てみたい…」
「生きれますよ。必ず」
「有難う、セティ」
「さぁ、もう上がりましょう。あまり長くいては体に障ります」
シャワールームから出て兄の体を拭き、私も拭かれるといつものようにベッドに連れて行かれる。
「…今日もひどくやられたね…」
消毒液で兄が私の背中を消毒したり、酷い傷は縫って下さる。
「慣れています」
「慣れなくていいよこんな事…」
チクチクする針の痛みは兄の愛の証。もう10年以上も続けてくれるこの時間は私にとって一日で一番幸せな時間なのだ。
「ほら、出来た。さぁ、ご飯に行こうか」
「はい」
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