後悔の果て

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「ちょっ、待て、人を殺したなんてずるいぞ! 」 なまくら坊主の水は胸元まできている。 【なまくら坊主 後悔してください】 「あ、あれだ、小学生の頃万引き…… いや、強盗、強姦、殺し以外の犯罪は色々やった! 後悔してる! 」 必死で叫ぶものの、 【後悔を認められません】 水の勢いは止まらない。 【ロリコン 後悔してください】 三十秒を過ぎた砂は再び勢いを増し、ロリコンの胸元まで埋めている。 「私は夫を殺した事で実刑判決を受けた。 そのせいで娘と会えなくなった。 十年の懲役を終えても娘には会えず、どこに居るのかも分からない。 あの日以来、ずっと我が子を守れないでいる。 あの日以来、私には家族がいない。 後悔している」 【ロリコンの後悔 認定 三十秒間 砂の落下量減少します】 「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな! 」 叫び続けるなまくら坊主の首元まで水が迫っている。 「やった! 」 「ロリコンが逆転したわ」 喜ぶ美流玖と心愛。 「まだよ、もう少し差をつけないと…… 」 ソープは自分が砂に埋もれているかのように歯を食いしばっている。 「カナヅチのなまくら坊主が水に浮かんで何秒耐えるのかだね」 博士はロリコンを心配そうに見守りながらも冷静にゲームわ見ている。 【なまくら坊主 後悔してください】 「ちきしょーっ! なんでこんな事で命捨てなきゃなんねぇんだ! こんなゲームなんて参加するんじゃなかった! 」 【なまくら坊主の後悔 認定 三十秒間 水の落下量減少します】 ようやく見せた本音に、顎先まで貯まった水の落下がやっと緩やかに。 「そっか…… 」 何かを閃いたような博士に、 「何?何かわかったの? 」 美流玖は期待を込めて言葉の先を促す。 「【水】には【砂】があれば足場が作れる。 【砂】には【水】があれば、足場を固めたり掘り起こしたりする事が出来る。 相反する物は必要な物でもある訳なんだ」 自分自身に語りかけるように話す博士。 「そんな事分かったってあの状況じゃあどうしようもないじゃない」 心愛はがっかりする。 「そういう意味では【砂】の方が有利。 人は砂を生み出す事は出来ないけど、水を生み出す事は出来る」 博士は変わらず独り言のように一つの答えを導き出す。 「水を生み出す…… 」 どういう事だろう?と考え込む美流玖。 「そっか、唾とか涙とか…… 」 心愛は少しだけ躊躇って続ける。 「オシッコとか」 小声になった心愛の答えに、 「そんな事はきっとロリコンは分かってる。 そして、もうすでに実践してあの状態なんだろう」 ソープは、他の答えを探しているようだった。 【ロリコン 後悔してください】 「私はなんでこんなゲームに参加しちまったんだろうね。 命を掛けさせられるだけじゃなく、気の強い女や、親友ごっこの女子高生、生意気な小学生なんかと一緒に過ごすことになるなんてね。 ほんと、後悔してるよ」 「よし、いいぞ。 なまくら坊主と一緒の答え」 ソープは小さくガッツポーズし、 「これで、差は開いたまま、 次のターンには決着が着くね」 博士がもう少し先にある勝利を確信すると、 【ロリコン 後悔を認められません】 元に戻った砂の落下量は変わらず、重く降り注ぐ砂はロリコンの顎先まで埋めた。
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