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三分の一の誘惑
どこまでも深く続く階段。
幅が細長く、縦一列で降りていたせいもあるが、ロリコンの凄惨な離脱を思ってなのだろう誰一人喋る事はなかった。
ようやく全ての段を降り終えると、薄暗く長い一本道の廊下。
巨大病院の設備とは思えないチカチカと点滅する裸電球がいくつかある部屋を照らしている。
扉の上にある【理事室】と書かれた表示板を確認し、
「この部屋だね」
ようやく言葉を発した博士を先頭に中へと入る。
四人とも入り終え、扉を閉めたところで、
「遅かったじゃないか。
待ちくたびれちまったよ」
部屋奥の重厚なテーブルの向こうにある回転ソファー椅子がクルリと回る。
回転した勢いのまま肘を前に出してテーブル置いて指を絡め合わせて手を組み、その上に顎を乗せてニヤリと笑う男。
「あなたが次の対戦相手…… 」
心愛は四十代と思しき男の力量を、表情や動作を見ながら吟味し、
「 ……あなた一人だけですか? 」
辺りをキョロキョロと見回しながら、距離を置いた言葉で質問する博士。
「あぁ、俺一人だけだよ」
博士に合わせるように答え、穏和な笑顔を見せる男。
「いい声してるねぇ。
それに、その縮れて伸び切った髪と無精髭を整えりゃあ案外良い男なんじゃない」
ふざけた言い回しをしながら睨みを効かせるソープ。
「これでも結構モテる方でね」
穏和な笑顔をソープに向け直し、スムーズなウィンクをする。
【それでは、次の対戦を始めます】
携帯電話が鳴ったところで男は両手を肘置きへと戻し、上半身をソファー椅子の深くに倒しもたれ、何かを思考する様に薄目で天井を見上げている。
「観察されていたのは私達の方かも」
美流玖の思いは皆が思っているようだった。
【対戦ゲームはじゃんけん】
「じゃんけん?
じゃんけんてあれか?
グー、チョキ、パーのあれか? 」
あまりの単純なゲームに動揺するソープ。
「ははは、あんた見た目と違って可愛らしいな」
男の笑いは部屋全体を和ませ、ソープの顔を赤らめさせた。
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