三分の一の誘惑

2/6
前へ
/51ページ
次へ
【チーム代表戦 一回きりの勝負となります】 「代表戦…… 」 「一回きりで勝負が…… 誰がいくの? 」 「私がいく」 手を挙げたのは心愛。 「私、不正行為で失格になったりして皆んなに迷惑掛けっぱなしだから」 助けてもらった上に勝負にも勝てなかった美流玖は、手を挙げられなかった自分を情けなく思った。 俯く美流玖と正反対に上を見て力強い目を見せる心愛。 「わかった、心愛あんたに任せるよ」 その力強さをソープは信頼した。 「やるからには負けないでよね」 生意気な口調で後押しする博士。 「挑戦者は決まったみたいだな。 まぁ、こっちは俺しかいねぇしな」 男が笑ったところで対戦者が携帯画面へと表示される。 【ココア VS ギャンブラー】 「悪いけど私、運だけは良いんだから」 ココアはギャンブラーの方向へゆっくりと歩いて行く。 「ギャンブルだけで生活してきた俺に運で勝てると思ってるのか? 」 ギャンブラーもゆっくりと心愛の方向へ。 【勝者チームは次のステージへ。 敗者チームは死の淵への連行となります】 お互いに手が届く距離になったところで、 【制限時間 5:00】 カウントダウンがスタートし、 【A. グー B. チョキ C. パー】 選択肢が現れる。 「私、じゃんけんは殆ど負けた事ないんだから」 精神的な揺さぶりをかける心愛。 「お前さっき運が良いとか言ってたな。 じゃんけんやギャンブルには確かに運が必要だ。 だがな、それだけじゃあ勝ち続けるなんて無理だ。 お前は殆ど負けた事がないと言ったが、それにはそれなりの理由がある」 動揺する事なく、逆に揺さぶりとま取れる言葉を投げ掛けるギャンブラー。 「じゃんけんが運だけじゃあないって事? 」 「そうだ、グーチョキパーを出す確率や相手のクセ、それに加えて出す間際の相手の手の筋肉やその動きを見て、こちらの出す手を変える。 それを運だと言っているってことは、お前はそれを無意識にやっているんだろう」 優しい口調で話す理屈は的確で理解出来た。 「私がじゃんけんに強いってことが間違いないって事じゃない」 この勝負に勝つ自信が揺るぐことはない。 「それが出来るのはお前だけじゃないって事だ」 その自信を上回る余裕を見せるギャンブラー。 「俺はじゃんけんを覚えた時から今まで一度も負けた事がない」 その言葉が本当であろう事が空気を通してひしひしと伝わってくる。 「そ、そんなわけないじゃない! 今まで一度も負けてないなんて…… 」 否定を口にしながら、負けを想像して背筋に凍るような寒気が。 「じゃんけんだけじゃないさ。 独り者の俺はギャンブル、ゲーム全てにおいて負けた事が一度もない」 嘘みたいな言葉が、この男を通して入ってくると信じないわけにはいかなかった。 生唾を飲み込む音を押し殺し、 【A. グー B. チョキ C. パー 残り時間 3:57】 勝負の事だけを考え、画面に集中しようとすると、 「お前が俺に勝つ事は出来ない」 男から意外な言葉が発せられる。 「そこで提案なんだが、このゲーム引き分けにするってのはどうだ? 」
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加