三分の一の誘惑

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「な……何を言ってるの? 」 ギャンブラーの言葉は心愛の理解力を超え、思考力を止めた。 「何って」 ギャンブラーは大きく笑って続ける。 「そのままの意味だ。 このゲーム引き分けにして俺と仲間にならないかって事だ」 「ちょっとあんた何言ってるのよ! このゲームを放棄するって言うの? そんな事すれば全員敗者になるかもしれないじゃない! 」 予想しなかった提案に怒声わー上げたのはソープ。 「ゲームはするさ、放棄なんてすれば間違いなく俺達に待ってるのは死だ。 勝負をした上での引き分け、お互いに同じ手を出せばいい」 優しい微笑みを見せられ、ソープはまた何も言えなくなる。 「【一回きりの勝負】【勝者と敗者】そう書いてあるのに引き分けなんて認められるの? 」 冷静に危険要素を尋ねる博士。 「一回きりってのは一度出すだけ、とも取れる」 「そんな理解の仕方運営が認めると思うの? 」 食い下がる博士。 「運営者なのかAIなのかは判らないが、俺達の行動、思考は見張られている。 そして、選択肢の勝負という範囲を越えなければそれらは認められ反映される。 その事を通常モードの際に確認してる」 「通常モードって…… これは上級編だよ? そこでも適用されるって保証は? 」 「そうだな…… 」 ギャンブラーは一呼吸置いて、 「これは運じゃなく、勘だな」 また笑った。 「勘って…… 」 美流玖の呟き、その先を、 「そんなもの信じろって言うの? 」 ようやく平静を取り戻した心愛が尋ねた。 「まぁ、その勘を後押しするのは制限時間だ」 「制限時間? 」 【残り時間 2:42】 「じゃんけんの一回きりの勝負なんて数秒で決着が着く。 なのに、【制限時間】は五分もあった。 それはこういう交渉をする時間も含まれていると俺は思うんだがな」
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