三分の一の誘惑

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【それでは勝負開始します。 じゃんけん…… 】 心愛が選んでいたのは、 【ココア選択 C. パー】 相手が宣言した手。 「なっ…… 」 相手の思惑にハマったんじゃないか?、と声を詰まらせるソープ。 それに対して、 「多分、その手が一番の正解なんだと思う」 冷静な口調で呟く博士。 「どういう事? 」 心愛の身を案じ、何も判断出来ずにいる美流玖はすぐに尋ね返した。 「相手が裏を読んだり、裏の裏を読んだりすれば、出すのは【A. グー】か【B. チョキ】。 宣言通り素直に出したり、裏の裏の裏を出せば【C. パー】 」 「うん」 分かりやすい説明に、美流玖だけでなくソープも頷く。 「つまり、相手が【グー】か【パー】なら心愛は負けない。 三分の二の確率で負けないんだ」 博士の解説に二人が納得したところで、心愛が声を上げる。 「私、そんなに賢くないよ」 心愛は三人を見て微笑み、 「私の心は単純。 この男の言葉を信じただけ。 誰も死なないで済むならそれが一番良い」 ゆっくりと右手を目一杯差し出し、 「だから私は【パー】を選んだ」 手のひらを思い切り開けて細い指先を伸ばし、ギャンブラーに想いの籠った目線を向ける。 「ハハハハハハハ…… 」 部屋中に響き渡る大笑いをし、 「お前、名前と同じくらい甘ったるいな」 口元を引き締めるギャンブラー。 「て、てめえ…… 」 心愛とは真逆に拳を握り締め、今にも殴り掛かろうとするソープ。 それを止めたのは、 【ギャンブラー選択】 決着をもたらす携帯音。 「俺が出したのは…… 」 引き締まっていた口元を再び緩め、 【C. パー】 分厚い手のひらを開けて太い指を前に向け、 「同盟成立だな」 【この勝負は引き分けとなります】 心愛のパーを優しく握り締めた。 【ギャンブラー チーム女神に加入となります】 「まだ青臭い女子高生二人に、小学生のガキ…… 」 ソープはわなわなと小さく身震いし、 「きな臭いオヤジまで入ったら…… チーム女神でもなんでもねぇじゃねーか! 」 耳をつんざくソープの叫びが響き渡ったところで、 【次のステージに向かってください】 部屋の奥床の隠し扉が開き、また階下へと繋がる階段が現れた。
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