見誤ることなく

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中に入ると、まず目に飛び込んできたのは雀卓。 それを囲むように十代から二十代の金髪の男達が座って麻雀を楽しみ、さらにもう一人が観戦している。 「遅かったな、待ちくたびれたぜ」 「もう少し遅かったら役満揃ってたのによ」 「一発逆転の手なんてそうそう上がれるかよ」 男達はニヤニヤしながら扉から入ってきた対戦チームを見ている。 「病院には似つかわしくない雰囲気だな」 ソープは雀卓の奥に並んでいるパチンコ台やカジノ台を見ながら呟く。 「そうでもないよ。 リハビリやボケ防止には、頭と指を使ってドーパミンを出すのが一番良いんだよ」 違和感はないと博士は説明する。 【今回はチーム対戦となります】 「相手は五人、こちらも五人か」 ギャンブラーは対戦相手を吟味しているようだった。 「こんな部屋で何の対戦なんだろうな」 気持ちの悪い笑みを浮かべながら、リーダーと思しき男が次を促すと、 【スロット対決 一人三千枚の持ちコインで、終了時点で三千枚を超えた分の総枚数の多いチームの勝ちとなります。 制限時間は三時間】 それに応えるように携帯画面に説明が現れる。 同時に潜んでいた死神が部屋の奥にあるスロットコーナーへと皆を導く。 「す、すごいね」 部屋の奥には、百台はあるであろうスロット群。 死神は大量のコインの入ったドル箱を皆に渡していく。 「結構思いね」 美流玖の細い腕にドル箱が乗った時、 【チーム女神 VS チーム金髪】 「女神だとよ、あんなおっさんまでいるのによ」 金髪チームのからかいに、 「幸運の女神はいつでも俺達の味方だってことさ」 ギャンブラーは余裕を見せて笑う。 「勝手に意味つけるんじゃねーよ」「さっきチームに入ったばかりなのに」とは誰も突っ込まずにいた。 【それでは対戦スタート】 合図と同時に、金髪五人は台を決めて座り早々に打ち始める。 【残り時間 2:59:48】 「どの台を打ったらいいんだろ」 美流玖と心愛は悩み、 「パチンコは売ったことあるけど、スロットはないんだよなぁ」 ソープは頭をポリポリと掻き、 「あのピカピカ光ってるやつが良いんじゃない」 博士がその台に座ろうとすると、 「それはダメだ。 お前はこっち、ソープはそこ、美流玖はこっちで、心愛はここだ」 コインを数十枚持ってウロウロしていたギャンブラーが指示を出した。 「ちょっと、何勝手に…… 」 ソープが文句を言おうとすると、 「勝負に勝てそうな台を選んで初動を確認した。 俺達が勝つなら、今選んだ台を打つしかない」 ギャンブラーは目を細めて強い意思を仲間に伝える。 「ほ、本当にこれで良いの? 」 美流玖達の目の前には、登場した時とは明らかに違うであろうくすんだ色をした、かなり古い機種が一回転だけ回した状態で静かに佇んでいた。
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