不安の始まり

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用具室の中で体育座りしている人物を見て、 「いたじゃない、男」 口角を上げ、ソープに向かって嫌味のように呟く。 「男ってったって……」 ソープは男の襟元を掴み上げ、 「ガキ中のガキじゃねぇか!」 小さな体を外へと放り投げた。 「ぼく、いくつなの?」 心愛は男の子の前に座って優しく聞く。 「ぼくなんて言うな! 僕はもう十才だ!」 拗ねて膨れる顔を見て、心愛は「やれやれ」と立ち上がり、 「とりあえず立って、博士君」 美流玖は微笑んで優しく手を差し伸べる。 博士は少し考え、優しく手を払って、 「いい、自分で立てる」 お尻の埃を払いながら立ち上がった。 お尻の上には大きなリュックを背負っている。 「ババァにガキの女、男といっても更にガキ中のガキ、こんなのがチームってか」 ソープが悪態をついていると、 「なんだよ次は!」 携帯電話が震え鳴った。 【それでは、最初の対戦会場へと向かってください】 指示されたのは、一階一番奥にあるオペ室。 「行くしかないわね」 ロリコンは早々に扉へと向かう。 「ま、待てよ」 ソープが続き、 「私達も行こう」 心愛は美流玖に声を掛け、 「うん、博士も一緒に」 微笑みを見せて博士に右手を広げて差し出す。 「う、うん……」 恐怖もあるのか今度は素直に手を繋ぎ、心愛、美流玖と共に扉へと向かった。 「足音は聞こえないわね」 扉に聞き耳を当てていたロリコンが全員を見渡し告げる。 「行くしかないだろ」 ソープからも生唾を呑み込む音が聞こえてくる。 それをかき消すよう、「フーッ」と少し長めの息を吐き、 「みんな身構えろよ!」 そう皆んなに告げて、扉を蹴り開けた。
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