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「どうやって打てばいいの? 」
美流玖の質問に答えたのは、
「コインを三枚入れてレバーを押し、回転しているリール下のボタンをポンポンポンと押すんだ」
最低限の知識は持っているソープ。
「それをひたすら天井まで回す」
ギャンブラーの言葉に、四人は一斉に薄暗い光を放つ蛍光灯のある天井を見上げた。
「違う違う」
ギャンブラー少しの間大笑いし、すぐに顔を引き締め直す。
「この機種には最低限ここまで回したら絶対にボーナスが掛かるという回転数があるんだ。
それを天井という。
そこまで必死に回すんだ」
「その天井っていうのは何回転なんだ? 」
ギャンブラーは素早い指捌きでリールを止めながら、
「一千九百二十回転」
まだ二十回転しかしていないスロットを打ち続ける。
「せ、千九百回転だって! 」
ソープが驚きの声を上げると同時に、
ガコッ
後ろで打っていた相手チームのリール左下にある【let's go】という文字が光った。
「あれは何? 」
博士が冷静に尋ねる。
「ボーナス確定さ」
ギャンブラーの言葉通り、
「意外に早かったねー 」
リーダーらしき男は手慣れた手つきで【777】を揃え、ジャラジャラとコインを出していく。
それが引き鉄になったかのように、
ガコッ、ガコッ、ガコッ、ガコッ……
次から次へと相手チームはボーナスを揃える。
「ちょっ、ちょっと、私達こんなことしてていいの? 」
心愛が疑問を口にし、
「私達もあっちの新しそうですぐにボーナス掛かるやつ打った方が…… 」
美流玖が提案する。
「あれは五号機のAタイプと言われるやつだ。
ボーナス確率が良いから掛かりやすい。
だから次から次へと掛かっても当然だ」
ギャンブラーの回転数はもう百を超えていた。
「確率が良いなら尚更あの台に座った方が良いんじゃないの? 」
博士も手を動かしながら淡々と尋ねる。
「確率は良いが、自分で引き当てなきゃならない分連チャン性が低い。
三百枚程度払い出され、次掛けるまでには百枚以上消費する。
それに、あの台には天井機能が備わっていないから必ずハマりが来る」
ギャンブラーの長い説明に苛立ちながら、
「天井ったって、こっちは千九百回まわさなきゃいけねぇんだろ! 」
【残り時間 2:52:27】
「回し切れるのかよ!
それに回し切ったところで、あいつら以上にコインを出さなきゃいけないんだぞ! 」
ソープは立ち上がってガンをくれながら叫んだ。
「俺達が打っている台は、このゲームが始まる前にすでに五百回転はしている。
だから残りは千四百回転ほどだ」
ギャンブラーは見事なコイン捌きで更にペースを上げて打っている。
「それは確かなの? 」
博士も淡々と打ち続けている。
「あぁ、俺の今までの知識と経験と勘がそう言っている」
一ゲーム回してスロットの挙動を確認したのはその為だという。
「でも…… 」
不器用な手つきでコインを入れ、レバーを叩いて後ろを見る美流玖。
ガコッ!
「また光った!
今日の俺はツイてるねぇー 」
相手チームはどんどんコインを増やしている。
「見誤るな! 」
背後を気にして指の止まった美流来を筆頭にチーム全員を見回したあと、ギャンブラーは大事な事を説明するようゆっくり静かに話し出す。
「ギャンブルをやる上で、見誤っちゃあならない事が二つある」
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