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美流玖や心愛の不慣れだった手つきも、リールが回転するたびに上達して様になってきた。
【残り時間 2:25:03】
「三十分で約五百回転、あと千回転回そうと思ったら残り時間は一時間半を切る」
博士は丈夫に設置されているカウンターを確認してから、激しい光とボーナス音を次から次へと鳴らしている後ろを気にする。
「相手はすでにプラス五千枚。
僕達が天井まで回す頃にはプラス一万五千枚を超える計算だよね」
心愛も同様の心配をしていた。
「単純に一万五千枚差って話じゃないよ。
僕達は天井まで回すのに持ちコイン三千枚がほぼ無くなる」
「て事は…… 」
コインを入れてレバーを叩きながら美流玖が頭の中で計算していると、
「三万枚も差がつくって事だ。
それくらいの計算は私にだって出来る」
黙々と打ち続けていたソープが答えた。
「それだけの枚数を挽回出来る性能がこの機種にはあるって事でしょ? 」
博士も打ち続けながら、「違う」とは言わせないとギャンブラーに横目で視線を送る。
「あぁ、この機種は一回のボーナスで七百十一枚の払い出し」
「相手が打ってる機種の約倍の払い出し……
でも、それだけじゃあ…… 」
心愛の心配を止めるように、ボタンをポンポンポンと押しながら、
「天井は千九百二十と言ったが、当然それまでに掛かる可能性も充分ある」
持ちコイン千枚を残して青い【7】を三つ揃えた。
激しい音楽を鳴らし始めたギャンブラーの台に、
「ちっ…… 」
背後から舌打ちが聞こえたが、相手チームも勝負心を間違えず、淡々と打ち続けて【let's go】マークを光らせ順調にコイン枚数を増やしている。
今までテンポ良く打っていたギャンブラーの指は第三停止ボタンの前でゆっくり動きを溜め、
「そして、この機種最大の特徴は……
よっ!と」
第三停止ボタン押すとパネル右側に【十五代将軍】と書かれた文字が激しい音と共に光り、
「一ゲーム連だ」
ボーナス中にも関わらず、青い【7】を三つ揃えた。
「一ゲーム連て? 」
間違いなく凄い事だとは理解しながら尋ねる。
「ボーナスが終了してすぐの一回転目、すぐにボーナスが掛かってまた七百十一枚の払い出し。
それを続ければ、ゲーム終了時に勝ってるのは俺達だ」
ギャンブラーの自信の笑みに、
「でも、例え天井まで回して掛かったとしても、僕達も連チャンするとは限らないよね? 」
博士は信じて打ち続けるための最後の質問をした。
「俺達の相手は運営だって言ったろ。
その運営の意図を汲み取ると、三時間という時間制限、三千枚の持ちコイン、これらで最大にコインを増やせるのはこの機種。
そして、連チャンするであろう台を選んだのは、ギャンブル負け知らずの俺だってことだ」
大きく笑うギャンブラー。
「わかったよ」
コインを増やし続けているギャンブルというものをよく知っているであろう相手を背中で感じながら、
「信じて打ち続けるしかないね」
博士の慣れてきた手つきは、更に打つスピードを上げた。
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