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【残り時間 1:42:03】
ギャンブラーは八連チャン中、更に一ゲーム連を確定している状態でコインもかなりのプラスになっていたが、
「結局僕達は天井まで回さなきゃ掛からないみたいだね」
【博士 − 2,700枚】
心愛も美流玖も同じようなマイナス表示がされている。
相手チームとの差はこの時点でニ万二千枚。
「時間は充分ある。
今は天井まで回す事に集中しろ」
ギャンブラーはそう言ってまた一ゲーム連確定の【十五代将軍】を光らせる。
【残り時間 1:26:41】
「よしっ!」
天井まで回し終えた博士が【777】を揃えると、
「私も天井到達! 」
心愛、美流玖も続いてボーナスを引く。
チーム金髪も変わらず【let's go】ランプを光らせていたが、
「やった! 」
「一ゲーム連だ」
チーム女神の激しい音と眩しい光がそれを上回る。
【残り時間 0:34:11】
「でも、まだこんなに差が…… 」
チーム女神とチーム金髪の差は一万枚。
「大丈夫だ、計算通りいけば十分前には追い抜くはず…… 」
自信を漲らせていたギャンブラーの顔が曇る。
その目線の先は、いまだに光を灯さないソープの台。
「えっ、まだ掛かってないの? 」
心配になった心愛が覗き込むと、回転数はまだ八百を回ったところ。
「なんで…… 」
美流玖は気付く。
「電気椅子の火傷が酷くなってる」
ソープの両手は小刻みに震え、皮膚はどす黒く変色していた。
「その腕じゃあと三十分……
ボーナスを掛ける時間を考えたら残り二十分の間に天井まで回すなんて無理だね」
博士はため息を吐いた。
「わ、私と代わろ」
美流玖が立ち上がってソープの方へ向かおうとすると、
【代打ちは不正とみなします。
不正行為をした者のコインは没収されカウントされません】
携帯電話が警告する。
【美流玖 + 2,002枚】
このプラス分が無くなれば負けは確実。
「任せるしかない。
あとは俺が何とかする」
ギャンブラーはペースを上げるも、それが反目に出る。
「連チャンが止まった…… 」
【十五代将軍】が光ることはなかった。
美流玖、心愛、博士は何とか連チャンを続けている。
ソープの分まで稼ごうと、ギャンブラーは再び回し始める。
「でも、もう天井まで回す時間なんて…… 」
「さっきも言ったろ。
天井まで回さなくても掛かる時はある! 」
初めて焦り顔を見せるギャンブラーの意気込みは空回り、せっかく出したコインをどんどん減らしていく。
【残り時間 0:14:58】
十五分を切ったところで、
【チーム金髪 + 15,100枚
チーム女神 + 13,700枚】
千四百枚差で、全員の連チャンが途切れた。
「まだ時間はあるだろ! 」
叫んだのはソープ。
「最後の最後に勝ってたらいいんだろ! 」
自分に言い聞かせるように大声を上げ、言うことを聞かなくなった腕を、指を必死に動かす。
「残り三百回転をあの指で回すなんて無理だ」
これ以上コインを減らすわけにはいかないと博士の指は止まっている。
「まだチャンスはある。
今ソープが打ってる回転数はゾーンだ」
ギャンブラーは諦めずに打ち続け、
「ゾーン? 」
素人に説明する。
「簡単に言うと千九百回転の内、何箇所かに掛かるかもしれない場所があると言うことだ。
一回転から百九十ニ回転、四百二回転から五百六十五回転という感じだ」
「その最大のゾーンは天井って事だよね」
水を差す博士。
その考えを無視するようにギャンブラーは続ける。
「ソープは今、その天井前の最後のゾーンにいる。
時間的にもソープの体力的にもこれが最後のチャンスだ」
【残り時間 0:07:39】
そしてゾーン終了間際、リール上にあるギミックが激しく動く。
右端の第一リールボタンを親湯で押す。
【7】
真ん中の第二リールボタンを、速い回転を続けているリールのタイミングを見極め震える親指で押す。
【7】
そして最後の左端第三リールボタン。
「いけーっ! 」
皆の応援がソープの指に後押しをする。
ゆっくりと間を開け、
「これで決めてやる! 」
力を込めて押し込んだ。
リールが止まる。
全身の力が一気に抜ける。
右リールの青い【7】は無情にも枠外へと滑り落ちた。
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