見誤ることなく

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「もうお前達の負けだ」 金髪のリーダーが追い討ちをかけるように【let's go】ランプを光らせる。 【残り時間 0:04:02】 最後まで諦めていなかったギャンブラーの手も、枚数を減らしただけで止まってしまった。 【チーム金髪 + 15,400枚 チーム女神 + 13,100枚】 その差、二千三百枚。 「あんた達何諦めてんだよ」 ソープはしけた顔を並べている仲間を見渡し、 「コインが相手より多けりゃいいんだろ」 火傷の跡が痛々しい右腕を振り上げる。 「な、何をする気」 心愛の心配する声を、 「うぉりゃあーっ! 」 ソープの大声がそれを掻き消し、 「な、何考えてんだコイツ…… 」 目を見開く金髪達を無視して、振り上げた拳をスロット下部のパネル目掛けて振り下ろした。 低音の拳が砕ける音と共に、光が消えたパネルにひびが入る。 右腕にはもう力が入らないのか、重力に負けるようだらりと下がる。 「まだだ…… 」 今度は左腕を振り上げる。 「私は実は左利きなんだよ! 」 そして、先程と同じよう拳に力を込めてひび割れたパネルの中心目掛け振り下ろす。 パキッ…… パキッ…… ひびの広がる音が響き出し、 パキッパキッパキッ その中に吸い込まれるように、ソープの左腕はスロットの中へと吸い込まれていく。 「ソープ! 」 美流玖が思わず叫んだのは、割れた鋭いパネルが吸い込まれる度にソープの腕を切り裂いていくからだ。 「そんなに叫ぶな。 まだこれからだ、よっ! 」 そう言って今度はパネルごと腕を引き抜いた。 強く握られていた拳を開くとコインが床に落ちる。 それを皮切りに、扉の開いたスロットから大量のコインが溢れ出す。 「こんなに吸い込まれてたなんてな。 やっぱギャンブルなんてやるもんじゃねぇな」 傷付いた腕からは相当量の血が流れ、両腕ともだらりと下がったまま。 「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが…… 」 「ただの馬鹿じゃなくて大馬鹿だったな」 「そんなコイン、不正行為で認められるわけねぇだろ! 」 相手チームけら野次が飛ぶと、 【破壊行為は不正行為です。 不正行為をした者のコインは没収されカウントされません】 それを後押しするように携帯音が鳴る。 【残り時間 0:02:14】 「俺達の勝ちだ! 」 金髪達が高笑いすると、 「いや…… 」 それまで難しい顔をしていたギャンブラーは、 「お前達の負けだ」 真一文字に結んでいた口を解いて微笑んだ。 「何訳の分からねぇ事言ってんだ! 」 「こいつは完全に不正行為だろ! 」 「ふざけた事抜かしてるとてめぇ…… 」 掴み掛かろうとする金髪を止めたのはまたしても携帯音。 【ソープ ー2,500枚 没収】 「頭の悪そうなお前らでもこのくらいの算数は出来るだろ」 【チーム金髪 + 15,400枚 チーム女神 + 15,600枚】 チーム女神が二百枚の差をつけ勝っている。 「ふ、ふざけんな! 」 初めて焦りを見せる金髪達。 「こんな卑怯な手認められるか! 」 この言葉に博士が反論する。 「不正行為を認めて何が卑怯なの? これがズルいっていうなら、そっちも同じ手使えばいいんじゃない? 」 答えが分かっている問い掛け。 「全員がプラスになっている俺達がそんな手使えるわけねぇだろ」 小さな声はチーム女神には届かない。 【残り時間 0:00:05】 そしてカウントダウンが始まり、 「ヨン、サン、ニィ、イチ…… 」 最後まで諦めずに打ち続けていた金髪のリーダーが、 「うぉぉぉぉーーーっ! 」 ランプを光らせる事なく叫んだ時、 「ゼロ! 」 ゲームが終了する。 【チーム金髪 + 15,250枚 チーム女神 + 15,600枚 チーム女神の勝利】
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