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「や、やめろーっ! 」
敗北が決定した瞬間に、金髪達の首に死神の大鎌が掛かり、有無を言わせず暗い暗い奥の部屋へと連行されていく。
羽交い締めにされた体から伸びる腕、助けを求めて開く掌、目からは似合わない涙が溢れている。
チーム女神はそれを黙って見ているしか出来ない。
誰もがそう思っていた時、
「ちょっ、ちょっと…… 」
隣で動き出すソープに心愛は声を掛けた。
その声を無視して、ソープは連行されている金髪達に向かって歩き出す。
「どこに……
何をしようっていうの? 」
美流玖の心配の声に振り返る事はせず、
「あいつらの言う通り、確かに少し卑怯な手使っちまったしな。
あいつらの結末、最期まで見届けるよ」
重い足取りでとぼとぼと歩を進めながら、
「それに、もう私の腕じゃこれからの戦いあんた達の邪魔にしかならないしね」
美流玖、心愛、博士の脳裏にロリコンの姿が浮かぶ。
「邪魔だなんて思っちゃいない。
戻ってこい」
もう力の入ることのない右腕をギャンブラーが掴むと、
「見誤るな! 」
遊戯台の光でカラフルな点滅を繰り返す天井を見上げ、ありったけの大声で叫んだ。
「ソープ…… 」
予想だにしていなかった叫びに、続く言葉が出てこない。
ソープは顔だけでゆっくり振り返り、
「見誤るな、だろ。
あんたがそう言ったんだ」
優しさの伝わってくる腕を感じながら話し続ける。
「私達の相手は運営。
それに勝つためには、最善を尽くさなきゃならない。
途中経過は関係ない、最後の最後に勝ってれば私達の勝利」
ソープは強い目でニコリと微笑んだ。
決意と信頼が、言葉と表情で十二分に伝わってくる。
「わかった。
俺達に任せろ」
ギャンブラーが掴んでいた腕を静かに離すと、ソープは再び振り返って金髪と死神が向かった先へと歩き出す。
「ちょっ、ちょっと…… 」
「ソープ! 」
仲間の死に向かう行動に納得がいかないものの、誰もそれを止めることが出来ない。
暗闇の中へ入る直前、力の入る筈のないソープの右腕が上がり、
「じゃあな」
小さなサヨナラを告げて、大きく手を振った。
「ソープ…… 」
そして、悲しみが届く事のない暗闇へと消えて行き、錆びた蝶番の音と共に重たい扉が閉まった。
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