三月兎

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「さあ? ほら、あいさつの号令が」 美咲が前方の教卓を指さして言った。 あわてて綾那は立ち上がった。 「起立。注目。礼」 クラス委員が号令をかけ、クラスは安堵のどよめきに包まれた。 美咲も綾那の後ろで何食わぬ顔で号令に従った。 すぐ座って友達としゃべり出す者、廊下に出ていく者、今の教科の答え合わせを教科書でする者、ぼーっとする者と色々だ。 ちょっとため息をついて、綾那も腰を下ろす。 すばやく美咲が綾那の前へと進んでくる。 「あのね。いつでもどこでも出没するのやめてくれない。幽霊じゃないんだから。せめて時と場所を選んで」 「時は選んでますわ。少なくともチャイム鳴ってから来ましたから」 あまりにも間髪をおかずに無表情で語る美咲に綾那は毒気を抜かれた。 「そういうことじゃなくてねー はぁ~」 何を言っても無駄なことはわかっていたが、言わずにはいられなかった。 「ところで例の計画はいつ実行に移します? 今日は榊先生も出張でいらっしゃらないので、部活は3時には終了だそうですよ」 「もちろん!今日実行するわ!!」 先程とは、うって変わった目で、綾那は力説した。 美咲もそれをみて「よろしいですわ」といわんばかりの笑みを目に浮かべていた。 「じゃあ、早く調理室へ行きましょう。ちょうどお昼ですし、逃げられてしまいますわよ。それに先生方は今日から採点というお仕事が待っているのですから」 「OK!」 綾那は、一枚の紙を握って立ち上がった。
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