三月兎

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北校舎4階にある調理室は、甘くおいしそうなにおいでいっぱいだった。 オーブンをのぞきながら、臣人がにやっとした。 「焼けたでー。名付けて『臣人ちゃん特製低カロリーで食物繊維ばっちり!女子高生のダイエットの強い味方おからココアケーキ』や!」 オーブンにキッチングローブをはめた手を入れ、天板を取り出す。 直径4cmのかわいらしく丸められ、お菓子用の赤や青といったチェックのアルミホイルにのせられた一口大のケーキが16個お目見えした。 おいしそうな湯気が上がっている。 少し余熱を取りながら、臣人が上から茶こしでパウダーシュガーをふった。 さらさらの雪のように褐色のケーキが化粧をされていった。 バーンは準備室ドアを開け放し、そこにある事務用机に頬杖をついたまま、その様子を眺めていた。
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