三月兎

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美咲がその言葉を聞いて、ちょっと微笑んだ。 「それでは、何も聞かずにこの紙に印鑑を押してください」 そう言うと綾那が一枚の紙を差し出した。 「みっさ!」 綾那が一喝した。 美咲はまずいと思ったのかそれきり何も言わなくなった。 「私は臣人先生を尊敬しています。先生はいつも明るくて、冗談を言って私たちを笑わせてくれる楽しい先生です。料理もお上手だし、教え方だっていつもわかりやすいし。先生の家庭科の授業受けていて楽しいですよ!!もう、すぐ生活に役立つって言うか、」 綾那はお世辞を並べ立てた。 臣人は気をよくして、デレデレである。 「いやぁ、それほどでもあるかいな。わはは。わいのギャグは超一流やさかいな。それをわかってくれる劔地はえらいでぇ」 (かき氷、シャーベット、ペンギン、しろくま、ハンディファン、液体窒素、絶対零度……) 美咲は心の中でそう思った。 口に出すとまた綾那に怒られそうだったのでやめた。 「で、このかわいい私たちのためを思うなら、ここにポポンッとハンコをですね」 「今、ここにハンコなんてもってきてないでぇ」 きょとんとしながら臣人が言った。
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