血溜まりとピンク

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「ちょっと、悠ちゃ…伯耆先生、ちゃんと説明しなさいよ。」 久遠寺が心咲と一緒にソファに腰掛けながら質問した。 「あ、あぁ。八千代は今の九京村の元である清栄村の範囲以外は出歩くことができないと聞いたことがあって。この病院は丁度範囲の外なんだ。だから、唐牛刑事の話通りなら、入口のチェーンを通り過ぎたと同時に八千代が消えたことになるなって。」 「…そうか。だから先輩はこの病院を目指してたんだ。」 心咲は納得するように頷いた。 「あ、でもさっき伯耆先生が言ってた“時間が無い”ってどういう意味なんですか?」 「…え?あぁ。」 心咲の質問に、悠一郎も対面するソファに腰を下ろしてから答えた。 「…八千代が活動するのは今が最後なんです。八千代は自分の目標を遂げるために必死だということ。」 「…それって150年の話ですか?」 「えぇ、今まで言い伝え通りのことばかりが起きてます。恐らく八千代に与えられた150年という期限も本当なのかと。現に、この数十年現れなかったのに、期限の今年に現れましたし。」 心咲は今の会話であることを思い出した。 「…そういえば、さっきの襲ってくる八千代が私には泣いているように見えたんです。」 悠一郎は目を丸くした。 「…悲しいという感情があるのか。」 「ちょ、ちょっとちょっと!二人で話進めないでよ!」 久遠寺が間のテーブルを叩きながら二人の間に身を乗り出した。 「伯耆先生。あなた何かする気?」 「…あぁ。僕はそのためにここに来たんだからね。」 「…病院長が黙ってないわよ。そんな危険なこと。」 「それは僕からちゃんと言うよ。…唐牛刑事、久遠寺先生に木藤岡刑事のとこに案内してもらってください。それから日が昇るまでは病院の敷地からは絶対に出ないでください。私は一旦失礼します。」 悠一郎はそう言うと、席を離れた。心咲が久遠寺に視線を向けると、久遠寺は悲しそうな表情で何かを悩んでいた。 心咲は久遠寺に連れられ、個室の病室に案内された。 「じゃあ私もここで。」 「ありがとうございました。」 久遠寺を見送ると、心咲が病室の扉を開けた。 「…先輩?」 心咲が中に入ると、すっかり目を覚ました琢馬はベッドに座り外を眺めていた。 「先輩!」 「うわぁぁぁぁっ!…な、何だ、心咲か。びっくりさせるなよ。」 「呼んだのに気付かなかったんじゃないですか!…何見てたんですか?」 「…星。」 「…は?」 心咲も窓に視線を向けると、高台にあるためか、空が近くに見え、雲ひとつない空には満天の星空が広がっていた。 「うわーっ、綺麗ですねぇ。」 「周りに住宅もないし、明かりが無いから星の光が綺麗に見えるんだろうな。」 「プッ。…ハハハハハハッ。」 突然笑い出す心咲に、琢馬は怪訝そうな表情をした。 「ごめんなさい。先輩から星が綺麗なんて…そんなセリフが聞けるなんて、なんか面白くって。ハハハハハハ。」 「お前なぁ!…プッハハハハハ。」 緊急と恐怖から一時解放された二人は、しばらく笑って星空を眺めていた。
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