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 曇りで、少しだけ落ち着く日。  だけどその日は、ちょっとだけ変わった日だった。  電気を付ける必要はないけど、眩しさに目を細める必要もないくらいには明るい空の下。  僕は小さくあくびをしてから身体を起こした。  床にはいくつもできた本の塔。その間に無理やり敷いた布団が少し揺れて、本の塔もほんの少し揺れる。  睡眠不足か、まだ開ききっていない乾いた目を擦って、すぐ傍に倒れてる二リットルの水ペットボトルを口に付けた。  ごく、ごく、と生温いそれを一気に飲み干して、やっと丸まっていた背を伸ばす。  それでもまだ、目は覚めない。 「ふあ……」  口から出るあくびと、やっと湿ってきた目を再び擦って、また眠ろうと身体を倒しかけたところだった。  いきなりスマホがけたたましく声を上げた。  電話のマークをスライドして耳に当てる。と、寝起きにはキツい、明るい声が鼓膜を震わせた。 「おはよ! ドア開けて」 「…………あ?」  聞き返した瞬間部屋に響くインターホンの音。またスマホから声が聞こえる。 「今君んちの前にいるの」  メリーさんみたいなことを、さも楽しそうに言う彼女。  はあ、とため息を吐けば、今度は、ドンドン、と玄関を叩き出す。 「起きてんならさ、開けてよ」  本当は開けたくなかった。だけど開けないと近所迷惑だとも思った。 「……ちょっと待ってて」  僕は結局、本で埋め尽くされた部屋に彼女を招き入れた。
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