3人が本棚に入れています
本棚に追加
2
広げたWordソフト。だがそこには文章も何もなく、ただ白が広がっている。それだけなのに、彼女はまじまじと見つめていた。
「なんか書くの?」
黒いショートボブを軽く耳元で抑えながら言った。
僕はチラッと彼女を見てから答える。
「……レポート」
少し間を開けたのが悪かったか。「ああ、なるほどね」と、腑に落ちない声を出した。
「……何?」
聞き返すと、彼女は困ったように笑った。
「ああ、君なら小説の一つや二つ、書きそうだと思ったんだけどな」
観察眼鈍ったかなあ、と頭の後ろを書く彼女を前に、ごくっと生唾を飲んだ。
「…………こんな部屋だから?」
「それもあるかな」
言いつつ、パソコンから離れて部屋を見る。
壁を埋め尽くす、空きのない本棚。入りきらず床にまで作られた本の塔。文庫本、ハードカバー、漫画に雑誌。そこに紛れて、まっさらなコピー用紙の束もある。
「改めてみると、すごいね」
くるっと周りを見渡す彼女を、僕は見つめる。
上品なパンツスタイルだからか、この部屋では一層浮いて見えた。
「……まあ、唯一の趣味だし」
目を逸らして、埋もれ欠けているテーブルとその周辺を軽く片す。
「良いね」
言いつつ自分の座るスペースを作り上げた彼女は音もなく座った。
「……それより、なんで来たんだ?」
ようやく落ち着いて聞く。
いくら大学の友人だとはいえ、二人で会うような間柄ではなかったはずだが。
僕の質問に、彼女はニッコリと笑って返した。
「告白のためだよ」
最初のコメントを投稿しよう!