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「……は?」 「うっわ酷い顔」  からからと笑うのに合わせて、彼女の短い髪がはねた。  その如何にも面白がっている彼女から目を逸らし、ため息を吐く。 「……冗談やめろよ」  本気で怒ったわけじゃない、と思ったのか、彼女はニコニコと笑ったままだ。ごそごそとバッグを漁りながら落ちてきた髪を耳にかける。 「まあまあ。とりあえずこれ、手土産ね」  差し出されたのは、なにやらコーヒーの瓶。  見れば、ダークブラウンの粉が半分ほど残っている。  思わず眉間にしわをよせると、彼女はまた楽しそうに笑った。 「コーヒー嫌い?」 「……わかってんだろ」  違和感を覚えたのはそれだけが理由ではないのだが、彼女はまたからからと笑った。 「子供舌だねえ」  煽りに来ただけなのか。僕はただただため息を吐く。 「……それ、飲ませる気?」 「わかってるくせにぃ」  いつの間にか彼女の手にあるポット。  それがカチッと音を立てた。
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