狸寝入り

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狸寝入り

「はぁ。食後のコタツって罪」  野村さんの部屋には、なんと!コタツが登場しておりました。  そして、そのコタツを囲み鍋なんぞ食べたりして、食べ終わったら当然眠くなるわけで。 「ワシ風呂入ってくるけ、横になっちょりぃ」  お言葉に甘えて、少しだけ、少しだけ。  *** 「安部さん寝ちょる」  ただ、瞼を閉じてるだけで、起きてるんです。  嘘です。今、その声で起きました。起きましたよ。 「テレビ消すで」  いや、見てないけど、聞いてるんです。寝てないんです。  コタツの誘惑の所為で、目が開けられないだけなんです。 「あんまりそこで寝とったら、風邪ひくで」  大丈夫です、寝てないんです。起きてるんです。  足音と大きな影が近づく気配を感じる。野村さんもおコタ入ればいいと思う。 「あんまり無防備にされると、襲いたくなるんじゃが」  あぁ、野村さんがまたエッチなこと言ってる。それより二人でダラダラしましょう。  さらに野村さんが近づく気配。あぁ、これめっちゃ顔近づいてる。  目閉じててもそういう気配ってなんかわかるよね。  キスされるとかそういう系?  どこにキスしてくるのかなぁ。  あ、私、口の端ちょっと笑いそうになってる。バレてないよね。 「安部さん、よだれたれちょる」 「うそ!」  一気に目が覚めました。 「嘘じゃ。狸寝入りじゃったのバレバレじゃ」  と野村さんは楽しそうに笑った。
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