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鍵
「なぁ、安部さん。これ持っちょき」
そういって野村さんが差し出したのは一本の銀色のカギでした。
「これって」
「ここの部屋の鍵じゃ。うちに置いてる安部さんの物がワシがおらん時に必要になったら困るじゃろ」
「ごめんなさい。迷惑でしたよね。片づけます。すぐさまうちに持って帰ります」
知らず知らずのうちにいろいろ野村さんの部屋に持ち込んじゃってたもんね。ポテトマッシャーとかカエルの鍋敷きとか着る毛布とか。
「いや、そうじゃのぉて、いつでも来りゃぁええいう話じゃ」
「例えば、野村さんが帰ってくる前にお部屋で待ってたりしてもいいってことですか?」
「それ、ええな。たまにでええけ、うちで待っとって」
キャー、これはもしかして、料理作ったりしながら、おかえりなさーい、あ・な・た。とかやっちゃう?え?いいの?バカップルっぽい?そういうの実はちょっと憧れてたりしたんだよね。
「安部さん、何一人で赤こうなっとん」
そう言いながら、横から抱きしめられたら余計に顔に熱が集まる。
「え?いや、何でもないです」
「もしかして、裸エプロン狙っとった?」
「いや、そこまでは考えてませんでした」
あったかい手で背中をまさぐられるとそれだけで気分が高まってくるから不思議だ。
「じゃあ、何考えよーたん?」
「いえ、特に、何も」
「ふーん」
いきなりぱっと離されると体が寂しい。
「シたくなった?」
「そんなことない……よ」
「じゃったら、なんで乳首もう硬くなっとん?」
野村さんは手にしたままの鍵で私の頂をつついた。
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