始めに

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始めに

 恥の多い生涯を、とまで書いて、流石におこがましい事だと筆を止める。  成人すらしていない挙句、モラトリアムを謳歌している身分で、己を人間失格だと達観するのは親不孝も甚だしいし、何より太宰治大先生に失礼極まりないわけで。  しかし、まあ、恥の多い生き方をしてきたのは事実である。それは否定しない。思い返せば頭が痛くなるようなことばかりしてきた人間である。それは間違いない。浅はかな考えや行動で、あわや命を、という事態になったのは一度やニ度ではないし、私の愚行で迷惑を被った人も数えきれないほどいる。 要は手のつけようもない、大馬鹿ものなのである。  これだけ人間力が破綻していても、何らかの才が有れば良かったのだろう。しかし残念ながら私には天賦のものなど微塵もない。  例を挙げれば、音楽。楽器の類など少しも弾けない。楽譜も読めない。歌うのは好きだが、音を外さないようにするのでやっと。  例を挙げれば、運動。作秋、体育でドッチボールをしただけで、二日間筋肉痛に悩まされた。  料理、レシピに齧り付いて漸く完成。絵心なんて、もってのほか。  私は何の才もない人間である。   だけれども、才の有無に関わらず進路の話は来るわけで。自称とはいえ、進学校に通う限り大学に行くことは殆ど当然になっている。大学は勉強をより専門的にやるところだ。そして私は勉強が蕁麻疹が出るほど嫌いである。 辺りを見渡せば、友人たちは確固とした意思を持ち、進むべき道を決めていた。私は焦った。  親がくれると言っている、大人への猶予の時間を蹴ってまで、就職はしたくない。しかし勉強もしたくない。  そう担任の先生に打ち明けると、彼女は困った顔をして笑った。 『将来なりたいものってなに?』  いや、ないっす。とは勿論答えられなかった。
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