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「ねえ、晴翔! 私ね、好きな人ができたの!」
家が隣同士ということもあり、幼い頃からずっと一緒にいた、柊澪からの突然の言葉。
俺の思考はその時に、一時的に止まった。
聞き間違いであってほしかった。
ずっとずっと一緒にいた。
澪の隣に1番長くいたのは俺だ。
それなのに……
「へ、へえ? 好きな人ができたんだ。良かったじゃん。それで? 告白して付き合うことになった……とかそういうやつか?」
俺の声は震えていた。
自分が訊ねたくせに、その言葉の返答を聞きたくなかった。
頷かれたらどうしよう。
そんな考えが頭の中を支配したからだ。
けれど、そうはならなかった。
澪はゆっくりと首を横に振った。
「ううん、告白はしていないの。相手が私をどう思っているのかも分からない。まだ何もしていないんだ」
その言葉に、俺は心の底から安堵した。
応援しなくちゃいけない。
ずっとそばにいた俺だからこそ、それを応援しないといけない。それなのに……今の俺は、澪の隣にいる資格は……ない。
「そう……なんだ。お前の恋、実るといいな」
「うん、ありがとう」
澪は笑った。
俺は気付かなかった。澪が本当に想いを寄せている相手は、本当はーー
「ありがとう」
その言葉を言った君の瞳は、どこか嬉しそうで、それでいて……どこか悲しそうだった。
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