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No.1_言い争い
夜の8時30分頃の事。
「父さん!いい加減お城の敷地の外に出させて!お城で暮らすの飽きた!」
と、この国の8歳の王女、『ポーラ』が国王、『レオナルド』に訴える。
「まだダメだ、ポーラ。お前はまだあの力を制御できてないじゃないか。それに、お前には儂のあとを継いでもらうことになっているのだぞ。お前がいなくなったらこの国には王がいなくなる」
と、レオナルドか言う。
ポーラは話ができるようになってから、不思議な力が身に付いていた。それは、自分が命令をすればそれを相手に従わせてしまう力だった。
しかし(ポーラこの事には気づいていないが)、直接血のつながりがあれば、なぜかその力が通用しないのだった。
「最初の頃よりかはだいぶ制御できるようになってるよッ!それに、あとを継ぐつもりはないから!」
ポーラが強い口調になって言う。
「…まだ完全では無いだろう...」
レオナルドはため息まじりで言った。
ポーラは何も言い返せなくなってしまった。
ダメだこの人。全くわかっちゃいないや。こうなったら許可なくお城から出ていってやる!
「もういい!」
ポーラはレオナルドの部屋から出ていってしまった。
「やれやれ」
レオナルドはそう言ってため息をもらした。
────ポーラの部屋にて────
誰にも城から出たいなんて言うんじゃなかった。城から出るのが見つかったら兵士に捕まって父さんや、母さんに怒こられてしまう。
「えーっと......食料、明かり、本、テント、寝袋......」
あー、ボクはキャンプにでも行くのかな?いや、違う。家出するんだよ!あ、身分証明書とお金入れとかないと......。
「ポーラ?居る?開けるわよ?」
母のクリスがポーラの部屋に来た。
まずい...隠さないと...!
「ポーラ?居る?」
クリスがまたポーラが居るか確かめた。
「居るよー」
荷物を毛布の下に隠したポーラはクリスを部屋に入れた。
「そろそろ寝る時間よ。おやすみ、ポーラ」
と、クリスが言い、ポーラにキスをした。
「おやすみ。母さん」
と、ポーラは笑顔で母を見送ったが、足音が聞こえなくなると、また準備を始めた。
よし、これで完璧!夜は外に居たら警報装置が作動しちゃうから、警報装置も作動しなくて兵士も少ない朝に出よう!
ポーラは城の敷地の事は知り尽くしていた。
城内の本は全て読み、玩具になりそうな物は飽きるまで遊び尽くしていた。
あ、ジョセフさんにお別れを言ってこないと。
ジョセフとは、数年前にポーラの教育係を勤めていた、ポーラの唯一の理解者で、あの力が通用しない人だった。
ところがある日、他人がやった悪事を擦り付けられた為、今は城の中の刑務所に入れられている。ポーラはしょっちゅうジョセフの檻の前に行き、ジョセフと話していた。
ポーラは刑務所の前まで来た。
「おや、ポーラ様。こんな夜遅くに面会ですか?」
兵士がポーラに尋ねてきた
「ああ。ジョセフさんに会いに来た。来たことは誰にも言わないでね」
ポーラのあの力が発動した。今のはわざと発動させたのだ。
「はい。わかりました」
兵士は嫌そうな顔をしていた。
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