サンボンアシサマ

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「神棚『くらい』なんて言ってるようじゃ駄目だ。ここに今日『サンボンアシサマ』をお呼びしようっていうんなら、神棚は塵一つ残ってちゃなんねぇ」 「……そうだね。ごめんなさい」  いつもとは違うおばあちゃんの声音に、私の声が萎む。こんな気概では、サンボンアシサマに来てもらえない。 「昼は食べてきた?」  硬くなった空気をほぐすように、おばあちゃんがいつも通りの声で言う。 「うん。ケーキ買ってきたから、一緒に食べよう」  おばあちゃんはいつも優しい。小さい頃、私が熱を出すといつも果物をたくさん持って看病に来てくれた。兄が一時期不登校になったとき、無理やり学校に連れていこうとした父に「行きたくないって言ってるものを無理に行かせちゃ駄目だ」とぴしゃりと言ってくれたこともあった。  おじいちゃんが亡くなってからも一人でこの家を守り続けている。  買ってきたケーキをお皿に出し、おばあちゃんが緑茶を淹れてくれる。 「あれぇ? なんだかハイカラなケーキだねぇ」 「うん。ひな祭りケーキなんだって」  菱形にカットされたケーキはピンクと緑のスポンジの間に白いクリームが挟んであり、頂上に絞り出されたクリームの上にはイチゴが一つ乗っている。  ピンクのスポンジは甘酸っぱいイチゴ味、緑のスポンジはほろ苦い抹茶味で、甘さ控えめのケーキはおばあちゃんの濃い緑茶によく合った。
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