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ケーキを食べながらとりとめもない話をしていると、柱時計がボーンと一回鳴った。三時半になった。
「あ、じゃあ私、神社に行ってくるね」
「まだ早いんでないの?」
「夜は真っ暗な中歩くでしょう? 道のチェックもしておきたくて」
「そうか。気をつけてね」
二煎目のお茶を飲み干すと、自分の皿と湯呑みを台所に運んでから私はおばあちゃんの家を出た。
外は乾いた北風が吹いていた。歩いているうちに、こたつと緑茶で温まった体がどんどん冷えていく。夜はもっと寒いはずだ。
人通りも車通りもない細い道を歩く。一本向こうの通りはトラックドライバーたちの抜け道になっているので大型トラックがいきなり現れたりするが、この道は住民くらいしか使わないので滅多に人が通らない。老人が多いので、夜はきっと誰も歩いていないだろう。
十分ほど歩くと鳥居が見えてきた。朱塗りではなく石造りの鳥居は、夜でもちゃんと見えるだろうか。鳥居をくぐると細い参道が続く。階段は急で狭い。手すりもない。真っ暗な中、この階段を無事に上り下りできるか不安だ。感触を記憶するように、段を数えながら上る。
三十まで数えると、開けた場所に出た。古くて小さな本殿が見える。その手前には人影があった。頭にバンダナを巻いた男性が、荷台に大きな箱を括り付けた自転車に寄りかかっている。どうやってここまで自転車で来たのだろう。
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