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ポケットに突っ込んでいたスマホを取り出し、ディスプレイの時計を確認する。まだ四時になっていない。「サンボンアシサマのランプ屋さんは新月の日の夕方、神社にやってくる」と聞いていたのでまだ来ていないと思っていたけど、あの人がきっとランプ屋さんなのだろう。
ランプ屋さんは、私のほうを見ている。お客だと思われているのだろう。近づいてみると、思ったより若い人だった。おじいさんだろうと勝手に想像していたので、そのギャップに驚いた。
「サンボンアシサマのランプですか?」
ランプ屋さんのほうから聞いてきた。
「はい、そうです」
「儀式のやり方はわかってる?」
「はい」
新月の日、サンボンアシサマを呼び寄せるためのランプを買う。その日の夜、ランプを神社にお供えするとサンボンアシサマがやってくる。サンボンアシサマを連れて家に帰りひょうたんランプを神棚に祀る。朝までサンボンアシサマが神棚にいてくれれば、どんな願いでも叶うと言われている。
新月の日が必ずしも土日祝日になるとは限らない。待っていればそんな日もあったかもしれないが、一刻も早く願いを叶えたかった私は新月の今日、午後半休を取った。
ランプ屋さんは荷台に積んでいた大きな箱を開けると、中から紙包みを取り出した。サイズといい形状といい、洋梨かマンゴーのように見える。ランプ屋さんが紙包みを開き、中を見せてくれた。そこにあったのはひょうたんだった。表面に花の模様が彫られている。
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